真梨亜さんは男の趣味が残念だ

茜琉ぴーたん

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1章

3きゅん

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「まず髪色もだし…目、カラコン入れてるでしょって、一方的に怒られたの」

「へぇ…自前だよね?」

「もちろん…あたし、halfハーフじゃないの。厳密に言うと色んなmixミックスなんだけど…日本人の血は流れてないの、だから見た目はいわゆるガイジンなのね。説明会始めてだし、他の大学の人もたくさん居るから顔隠してたんだけど…ほら、容姿で目付けられて警戒されても嫌じゃない?でも逆効果だったみたい」

「お堅い担当の人だったんだね。完全に外国人だと示せばお洒落メイクだと思われなかったかも」

そこまで言ってふと大輝は「いや、この子は日本人だよな、見た目が外国人ってどう表せば良かったんだろう」と考えるも訂正できない。

 横文字の部分だけ本場の発音になるところからすると親御さんは英語話者なのだろう。

 けれど真梨亜の話し方はカタコトでもなくむしろ流暢りゅうちょうで、聴き心地が良かった。

「…茶髪の人がたくさん居てあの人苦々しい顔してたから、そこに眼の色も違うのが入ってきたから…いよいよ怒っちゃったのかも」

「言い返さなかったの?」

「うん…一斉に視線を向けられると怖くなっちゃって…入学式とか初めての所に飛び込む時って結構勇気が要るの…おかしいでしょ、20年以上この顔なのにまだ慣れないの」

 新たな環境に身を置く際に多大なストレスが掛かるということか。

 大人になってこれなのだからさぞかし幼少期はもっと苦労をしたのだろう。

 大きな企業の工場がある地域では海外国籍の労働者が集団で住んでいたり目にする機会も多いのだが、純粋な日本人と同じ格好の輪の中に入れば彼女の容貌ようぼうは異質なものだったに違いない。

「そう」

「いじめとかは無いの、でも宇宙人見るみたいなあの感じ…まだ嫌だな」

 カフェオレをちびちび飲んでは指先を暖める、その仕草が可愛らしくて大輝はほっこりと和んだ。

「ふぅん…でも大学では平気なんだよね?」

「それはね。留学生多くて馴染んじゃってる…日本語話せるって皆知ってるしね…ごめん、身の上話しちゃった…もう空気に慣れたから大丈夫だよ」

大きな二重の目は笑っても糸目にはならず、涙袋がぷっくり膨れて余計に存在感が増す。

 骨格からして違うのだろう、小さな輪郭にバランス良く配置された各パーツはそれぞれ造形に秀でていて総合的に美しい。

 『ミス◯◯』とか世界美女コンテストに出場する女性のような自信と余裕を持った金髪の混血美人。

 それがロングヘアをひとつくくりにして型にはまった『日本の就活生』の格好をしていて…スラスラと日本語を話すのだから大輝の脳は混乱しないこともない。


「ふぅ…」

 真梨亜はペットボトルにきゅっと蓋をして、合皮のビジネスバッグの底へ落とし腰を上げた。

「さてと…大輝くんは、あとどこ回るの?」

「僕は…家電屋のムラタ、大手だし聞きに行こうかと思ってた」

「そう、あたしも行こうと思ってたの…ご一緒していい?」

「どうぞ」



 会場に戻った二人は先程の危険ブースを避けて反対側からムラタコーナーへと回り、15分ほどの説明を聴いて冊子を貰い質問も無く席を立つ。
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