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「すごい臭い…」

「本当だな…ラベル剥がして千切っとこ」

「そう言えばね、カウンターであの人、クッキーをやたら『今食べて』って急かしたの。あとマカロンの時も。それに感想もしつこく聞かれた」

「それは…何らかを混入してたってことか?」

 もしかしなくてもそういうことなんだろう。

 マカロンの包みはとっくに捨ててしまったし、開封時に違和感があったかどうかなんて憶えていない。

 例えば今流したばかりの催淫剤を垂らした菓子をカウンターで茉莉花に食わせて、ポッポした彼女を早退でもさせる気だったのだろうか。

 そこからホテルへ連れ込める確率がどれだけあるのかは分からないが、数回でも成功した自信のある方法だったのかもしれない。


「そうかも…どっちにしても勤務中のフロアでの飲食は禁止だからしないけど……食べなくて良かった」

「まったくだな」

「…こっちはどうする?…空くん」

俺の腕の中に入った茉莉花は『ぜつりんぼうZ』を手に、わざとらしく小首を傾げる。


 電車内で視認した後に調べてみたのだが、この商品は日本メーカー企画製造の口コミ高評価製品らしい。

 キャッチコピーは『根本から強く先まで熱く、男の自信とみなぎるパワー』だそうだ。

 あくまで慈養強壮剤なので勃起力が上がるなんて決定的なことは明言されてはいないが、意図するところの効果はそれだろう。

 明らかに『根本』や『先』なんて書いてある訳だし。

「俺に飲めってか?…良いけど」

「ふふ♡ご飯、用意するね」

「………あー、すげぇ…」

 効くまで時間がかかるとのことなので食前に口に入れれば、色々入っているのだろうドリンクは複雑な味がして不味かった。

 しかし安心の日本製というのかさすが人気商品というのか、喉が焼けるような熱さを一瞬感じただけで後味はスッキリ気にならない。
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