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しおりを挟む「あの」
「良い、ヘソに出そうな、ん、ん、」
「おっぱいの上なら…良い、よ…」
「マジか」
しこしこしながらベビードールを捲る、すると何故だろう茉莉花の胸や腹に黒く墨のような汚れが広く付着しているのが分かった。
軽く擦っても落ちない、ボディーペイントみたいに茉莉花の白い肌が染められている。
「…茉莉花、なんか汚れてる、色が付いてる」
「え?…あ、本当だ…染色剤かな」
「落ちる?」
「お湯ならたぶん」
輸入品の安価なものはたまにこういうことがあるらしい。
汗で染料が溶け出して、体に付いてしまうのだという。
はて潮で濡れた俺の顔をさっきそれで拭かれたのだが、茉莉花が何も言わないところを見るとセーフなのだろう。
「茉莉花の肌が…可哀想に」
「大丈夫だよぉ…洗えば大丈夫」
「…ん…もうこんなの脱げよ…おっぱいに掛ける…んですぐ風呂入ろうぜ」
「うん、分かったぁ」
茉莉花はもぞもぞと濡れたベビードールを捲り上げて腕と頭を抜いて、シーツの心配なんかしつつ床に落とした。
そして改めて仰向けになり、犬で言うところの絶対服従なるポーズで俺を待つ。
脇を締めて胸を寄せて、完全に承服は致しかねるといった面持ちで、それでも視線はしっかり俺を捉えて離さない。
「…茉莉花、ここどうなってる?」
「……スジがいっぱい…硬そう」
動く指の間をおずおず覗く上目遣いは、お誘いのサインみたいでゾクゾクする。
事故に見せかけてその顔に引っ掛けたい…いや、泣かせたくない。
気心知れた仲でもNG行動をすれば信用は失墜し、ギスギスして最悪別れたりするかもしれない。
でもどうだろう、俺のことをこんなに好いている茉莉花なら許してくれるんじゃないの。
視線に念を込めて彼女を見下ろす。
「……茉莉花、」
我ながら情けない苦悶の表情で構える角度を決めあぐねていると、茉莉花は悟ったような顔をして
「………良いよぉ」
と目を閉じた。
驚いた、茉莉花はエスパーなのかな。
いやそれならお楽しみタイムを俺に覗かれるなんてヘマはしないか。
良いんだろう、良いんだよな、ダメなら額に穴が開くくらい土下座して詫びてどんな罵倒の言葉だって受け止める。
「(茉莉花、)」
じりじり膝を動かせばマットレスが沈んで標的が揺れる。
きちんと構えて髪には掛からないようにしてあげたい、でも洗うんなら一緒かな。
保身と労わりと時々投げやりな気持ちが交錯した。
「(ええい、ままよ、)」
ちゃんと覚悟をさせてあげたかったが拒まれるのが恐くて号令が掛けられなかった…
「茉莉花、出るッ……あ、あ、」
彼女の顔よりもっと白い塊が、右頬から唇を縦断して顎先まで伸びた。
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