清純派彼女には秘密なんて無い、よね？

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　月日は流れ茉莉花まりかの腹はぽっこり大きく丸くなってきて、彼女はようやく産前休暇に入った。

　家事をしながら出産準備に勤しむ日々、小さな産着を出しては片付けて毎日楽しそうに過ごしている。　


　そんな臨月に入ったある日の夜。

　二人で超常現象をテーマにしたバラエティ番組を視聴してした時のことだ。

　未確認飛行物体とか人形の髪が伸びるとか、ありがちなミステリーのエピソードが紹介されていく中に夢に関する話があった。

　予知夢とか逆夢とか正夢とか明晰夢めいせきむだとかそんな内容が展開されて行き、自然と俺たち夫婦もそれぞれに体験した夢の話を始めた。


「上手く走れないとか、あるよな」

「あるね、どうやっても遅刻しちゃうとか。今になっても学生の夢とか見る」

「あるなぁ、高い所から飛び降りたり歯がグラグラしてたり」

「ふわふわして、でも感触があっ…て……」

　何でもない話をしているうちに茉莉花はふと動きを止めて、困惑した様子でテレビから目線を逸らす。

　嫌なことでも思い出したかそれとも胎動を感じていたのか。


　しばらく難しい顔をした後に思わせぶりに口を開いた。

「…あのさ、時々ね、夢か現実か分かんないことってない？」

「あー、起きる直前に見てた夢とか、妙にリアリティあるやつな」

「うん、そう…そういうのでさ、今思い出したことがあるんだよねー…」

「うん？」

　俺も関わる話なのだろうか。

　少なくとも何かしら情報を共有できるトピックではあるのだろう。

「精力剤をさ、飲んだ夜ね」

「…うん、妊娠した日な」

「う、うん…私さ、あの日、空くんが先に潰れちゃってね」

「疲れたしな、何回かエッチしてたし…フワフワしてたよな」

「それで、そのー、妊娠したことね、夢かもしれないんだよ？私も今日まで夢だと思い込んで忘れちゃってたんだけど」


　頭までカアっとなっていたからスキンの装着に不備があったのかもしれないし、どの回で妊娠したかなんてのはもう永遠に分からない。

　まぁ何がどうあっても射精して茉莉花を妊娠させたのは俺に違いないから、妊娠発覚時のゴタゴタは笑い話でないにしてももう忘れて欲しいのだが…それがどうしたのか。

「歯切れ悪いな。ハッキリ言えよ、……まさか俺、襲ったりしたのか？」

　あれだけ回数も内容も濃い一夜だったから、続きを夢に見ても不思議は無い。

　俺だって最近はご無沙汰なので茉莉花のエロい夢は見たりするし、意図的に夢の中で楽しめたら嬉しいのにと望むこともある。