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しおりを挟む避妊の確実性を上げるには性行為をしないことが一番だ。
そんなことは分かっている。
女性側が薬を使ったってこちらがパイプカットしたって完全100パーセントにはならない、僅かにでも妊娠する可能性はあるのだ。
だからこそ妊娠を望まぬうちは避妊をする、当たり前のことなんだが…にしても僅かの可能性に当たるなんて信じられなかった。
「…嬉しくない?」
「……ごめん、まず驚いてる」
「空くんは私の浮気を疑ってるんでしょ」
「いや、いや…」
想定外の妊娠、想定以上にエロくなった茉莉花。
俺の頭には彼女が他所の男とまぐわう姿が浮かんでしまった。
茉莉花は浮気なんてしない、けど俺で満足できなくて他を当たってたらどうだ。
過去の元カノたちと同じ道筋なんじゃないのか、けれど腹の子はどうしたら良い。
責任は取らなきゃいけない、でも俺の子だという確信が無い。
この先の段取りを決めたり体を労わってやらねばならないのに、そんな余裕が俺には無かった。
「…空くん、元カノさんたちのことがあるから私は信頼してもらえるよう気を付けてたつもりだよ。歩数計アプリの履歴とか見る?私の移動ログ、遡って確認できるよ」
「……」
「職場と家の往復ばっかり、外泊も無い。疑われるのは心外だよ」
「分かってる、分かってる…」
情けなく目線を泳がせては頬を掻き、再び目を向けた先の茉莉花は一層冷たい顔になっていた。
母性はどうした、そんな軽蔑の眼差しで俺を見るのか。
いや、そりゃ当然か。
「空くん、DNA鑑定してくれても良いよ。この子は空くんと私の子供だよ。私とやっていけないならそれでも良い。さっきの第一声は正直ガッカリしたから」
「茉莉花、」
「恋人が妊娠報告したのに『誰の子?』って……ちょっと信じられない」
「ごめん、でも」
「お互い、冷静になった方が良いかもね」
そう言った茉莉花は、ハンドバッグを引っ掛けて出て行く。
止めなきゃ、でも開き直りかも、下唇を噛んだまま俺は動けなかった。
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