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おまけ
めざめ・後編
しおりを挟むそして初めてそれを着けて出勤した日。
更衣室でいつもと同じように制服スカートに穿き替える際、端の姿見に映る尻にポッと頬を赤らめる。
「(セクシー…?でも可愛い…私のお尻、可愛い…♡)」
食い込むほどではないがピチッとフィットした腰紐、尻の割れ目を薄く隠すバックレースは目論見通りタイトなスカートの表に響かなかった。
誰にも言えないけれど良い感じ、ブラウスの奥には揃いのブラジャーも息を潜めている。
「(背筋が伸びるというか…ドキドキしてやる気になる感じ…不思議…)」
新しいものを身に着ける時は心が高揚するものだが、外から見えない下着の『秘めたる美しさ』みたいなものは茉莉花の自信となった。
一撃を隠し持つ優越感と自信、好きなものに包まれる幸福感。
るんるんと高まるテンションは茉莉花の華やかさの一助となり業務態度にも表れる。
上や客からの受けも良くなったし毎日が楽しくて充実した日々が続いた。
そんなある日…茉莉花は職場の同僚に誘われた合コンに出掛ける。
どうせ見せないけど可愛いのを着けて行こう、と茉莉花は持っている中でも一番セクシーなランジェリーセットを選び服で隠した。
「呑まないの?矢作さん」
「あ、私、お酒はすごく弱いので…鈴川さんは?」
「そこそこ…矢作さんはネイルしないの?」
「してますよ、薄いピンク。ここだけストーンで、ひっそりオシャレです」
「ほんとだ。…奥ゆかしいなぁ…可愛い」
席替えをして隣になった男性はサラッとしているが優しそうで、接客業をしているというだけあって話が上手ですぐに意気投合する。
これが後々彼氏となる空なのだが、連絡先を交換し数回デートを重ねて、二人は交際することとなった。
空は過去の元カノに連続で浮気されて振られた経歴があることから、身持ちが固い女性でなければ難しいという拘りがある。
そんな彼の恋愛観を聞いた茉莉花は下着で遊ぶ趣向を言い出せる訳も無く…同棲を前に、清純なイメージを守ろうと彼女はランジェリーコレクションをスーツケースへと仕舞い込んだ。
「茉莉花はいつもきっちりしてるね」
「そうかな、ふふ」
信頼関係が出来上がりつつあってもあのランジェリーを見せたら「阿婆擦れが!」と変な勘繰りをされてしまうのではないか。
肌の露出も極力抑えた茉莉花はひっそり思い悩む。
可愛いランジェリーで飾った可愛い自分を見て欲しい、しかし言い出せぬまま二人の暮らしは1年が過ぎた。
そしてあの日。
「(今日のエッチ、あのセット着てみようかな…)」
風呂上がりの茉莉花は、覚悟を決めて寝室へと忍び足で向かうのだった。
おしまい
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