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しおりを挟む精力剤騒ぎの一夜からひと月半ほど、夏の商戦を闘い切った8月の終わり。
久々に休日が被った俺たちは自宅にてゆったり過ごしていた。
「空くん、お茶お代わりいる?」
「お願い」
あの夜の茉莉花の乱れっぷりに恐れ慄いていた俺だが、その次の営みでは彼女はいつも通り可愛らしく照れていた。
心配し過ぎたのだろうと思う反面、ペロッと舌舐めずりする仕草にゾワゾワ胸騒ぎが起こるようになってしまった。
だからこれまでの休日は朝から晩まで裸に近い格好で過ごしていたのだが、本日はしっかり着衣の上でリビングに居る。
誘いを断った訳ではなく、茉莉花も脱ごうとしないからそのままなのだ。
もしかしたら、彼女も俺の心境の変化に勘付いているのかもしれない。
セックスの方式は変わってはいないが、これまでよりペースが減っているから分かりやすいだろうし。
俺は元カノ2人に連続して浮気されて別れているから、性に積極的過ぎる女性を嫌悪していた。
だから淑やかな茉莉花が可愛くて、けれどもっと積極的になればと欲求を解放させてしまえば「手に負えない」と引いてしまっている。
身勝手な男のエゴだ。
エロい女は好きだけど伴侶にするには信用が足りないのだ。
あの夜の茉莉花が本性なのか誇張なのか、頻出するようなら俺は相手し切れない。
二人で居てもどことなく上の空で、夜を迎えるのが少し恐い。
手放さなければ良いだけの話なのだが、「貴方では物足りない」と言われるのが恐い。
他の男で解消するのを疑ってしまう、信用が減って行く。
そんな訳で、俺は朝から昼を食べた今でも茉莉花の体に触れずキスもしていなかった。
「空くん、ちょっと話があるの」
お茶の入ったグラスを俺の前に置き、茉莉花がダイニングの向かいに掛ける。
「うん…何?」
「あのね、私……その、生理が遅れてて」
「え」
慌てて顔を上げて、俺はおそらくこの日初めて彼女の顔をまともに捉えた。
「3週間くらい来てなくて、さっき検査薬使ったら…陽性だったの」
「あ、え、」
「…赤ちゃん、いるみたい」
にっこり笑う顔はもう母親のそれ、慈愛に満ちて福々としている。
しかし、俺は俺で受け止め切れず
「誰の子?」
と返してしまった。
考え得る限り最低の質問に、当然彼女の顔が強張る。
「…空くんとの子供だよ、当たり前じゃない」
「いや、避妊してたよ」
「してたけど…」
「いや、いや…」
茉莉花はスマートフォンのカレンダーを開き、元々の生理予定日と前回の生理日、そして妊娠したであろう可能性のある日を教えてくれた。
「これ…マカロン男のあの日か」
「うん…精力剤、飲んだあの日…排卵予定日の翌日」
「…避妊したよな…」
「空くん、コンドームは使っても100パーセントには」
「そんなことは知ってるよ!……いや、ごめん、」
つい声を荒らげてしまい、急ぎグラスのお茶を口に含む。
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