38 / 59
3
31
しおりを挟む「渡されたのか」
「うん、断ったんだけど、押し付けられて…割れ物みたいな音がするし落としたらそれも面倒だと思って受け取ったの」
つるつるとした表面加工が施されたA4サイズの紙袋は持ち手の根の部分がホック式になっており、パチンと留められて中身は見えないようになっていた。
「カウンターでも何か渡されてなかった?」
「あれはクッキーだった…ちょっと食べる気しない」
「これ開けるの、恐いな」
「うん…帰り道がバレるのも嫌だったから、ニカイドーの周りをぐるっと回って地下道から反対側に渡って撒いて来たの…成功してれば良いけど…走ったから中身、割れたかもしれない…」
「もし変なもんだったらここじゃまずいよな」
「うん、でも捨てて帰れる物なら捨てちゃいたい…」
おかしな物だったとしたら、いざ対面して分別してと労力を割くのがまこと面倒ではある。
しかし危険な爆発物とかだったらどうしようか。
俺は恐る恐る袋の口を開けてみることにした。
「…瓶だ」
「何の?」
「ドリンク剤かな?……あ、これヤバいやつだわ」
「やだ、捨てて帰ろ」
中に入っていたのはいわゆる慈養強壮剤で、蝮とかニンニクとか精のつきそうな食材がおどろおどろしくパッケージに描かれている。
その名も『ぜつりんぼうZ』、なるほど効きそうなネーミングだ。
それともうひとつは女性用だろうか外国語のラベルが貼られた瓶で、男性用が精力剤というところから想像するにこちらもただのエネルギー飲料ではなさそうである。
これらを使ってホテルにでも行こうとしてたのか。
マカロン男はなかなかの行動力があるみたいだ。
「あぶねー奴だな…んー…」
「何?何の飲み物?」
トイレに中身を流して瓶を捨てて帰ることは出来そうだが、証拠として取っておいた方が良いような気もする。
「家で見よう、写真撮ってからでも捨てられるし」
「変なもの入ってるんじゃないの?」
「いや、未開封だな。本人も使う予定だったろうから異物は入ってないと思う」
「使うって何、やだ、空くん、気持ち悪いよぅ…」
俺はジューススタンドの感想や冨地原さんにお世話になったことを話して茉莉花を宥めて、車内にも関わらずぴったりくっ付いて地元駅を目指した。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。



ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる