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 ジュースをずぴずぴすすって茉莉花を眺める、まさか本人は俺がここに居るなんて想像もしていないだろう。

 俺も接客業で土日祝はほぼ仕事なのだが、今日は珍しく土曜日休みを貰えている。

 とはいえ茉莉花は仕事だしやる事も無し、彼女には「友達と遊んで来るわ」と嘘をついて朝見送った。


「(楽しそうに仕事してら)」

 自分が言い出した手前「やめろ」と言えなかったが、可愛い下着によるメンタルとテンションへの効果は絶大なのだろう。

 包まれて守られている実感と心理的な安心とで大らかな態度に見える。

 まぁセットの紐パンは逆に浮いてしまうとのことで実用的なパンツに替えているが、煌びやかなブラジャーやらキャミソールやらが服の下で擦れる度にそれを感じられているのだろう。


「(さて、)」

もうジュースも空になったし例の客も現れないしで、今日のところは帰ろうかと腰を上げる。

 生き生きと仕事する茉莉花を眺められただけでも収穫だったし良しとするかな…そんなことを考えつつゴミ箱へ向かいプラ製のフタを外す。

 地下の惣菜屋で何か買って帰ろうかな、そんで夜は「エロい下着で仕事して、どんな気分だった?」なんて茉莉花を責めようか。


 呑気のんきな妄想を繰り広げつつ見納めにと中央のカウンターへ振り返れば、

「(あ、)」

困り顔を必死に隠して笑う茉莉花の姿が見えた。

 俺の方からは背中しか見えないが正対しているのは男性客で、それはつまり彼女に贈り物をした例の客だと思われる。

 なるほどさながらガールズバーだ。

 男性客はカウンターの席に着き茉莉花にあれこれ話しかけているようだ。


「(茉莉花、笑顔笑顔……もうちょい近付いてみよ…わー、)」

 あの穏やかでふわふわした茉莉花が、ストレスを感じているのか口の端が引きつっている。

 そして寒いくらい冷房が効いているのに、ひたいが汗でテカり始めた。

 まさか泣きはしないだろうが大丈夫か。

 明らかに場違いな客は周りのスタッフや女性客からもチラチラ見られて異質さが窺える。

 何か出来ることは無かろうかと、俺は茉莉花のいるアドバイザーカウンターの隣のブランド化粧品コーナーへと入り込んだ。

「お客さま、何かお探しで」

「すんません、ちょっと見せて下さい」

「はぁ」

 ここにおいては俺も充分に場違いな変な客なのだ。

 申し訳ないと思いつつも棚の隙間から茉莉花を覗く。
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