34 / 59
3
27
しおりを挟むジュースをずぴずぴ啜って茉莉花を眺める、まさか本人は俺がここに居るなんて想像もしていないだろう。
俺も接客業で土日祝はほぼ仕事なのだが、今日は珍しく土曜日休みを貰えている。
とはいえ茉莉花は仕事だしやる事も無し、彼女には「友達と遊んで来るわ」と嘘をついて朝見送った。
「(楽しそうに仕事してら)」
自分が言い出した手前「やめろ」と言えなかったが、可愛い下着によるメンタルとテンションへの効果は絶大なのだろう。
包まれて守られている実感と心理的な安心とで大らかな態度に見える。
まぁセットの紐パンは逆に浮いてしまうとのことで実用的なパンツに替えているが、煌びやかなブラジャーやらキャミソールやらが服の下で擦れる度にそれを感じられているのだろう。
「(さて、)」
もうジュースも空になったし例の客も現れないしで、今日のところは帰ろうかと腰を上げる。
生き生きと仕事する茉莉花を眺められただけでも収穫だったし良しとするかな…そんなことを考えつつゴミ箱へ向かいプラ製のフタを外す。
地下の惣菜屋で何か買って帰ろうかな、そんで夜は「エロい下着で仕事して、どんな気分だった?」なんて茉莉花を責めようか。
呑気な妄想を繰り広げつつ見納めにと中央のカウンターへ振り返れば、
「(あ、)」
困り顔を必死に隠して笑う茉莉花の姿が見えた。
俺の方からは背中しか見えないが正対しているのは男性客で、それはつまり彼女に贈り物をした例の客だと思われる。
なるほどさながらガールズバーだ。
男性客はカウンターの席に着き茉莉花にあれこれ話しかけているようだ。
「(茉莉花、笑顔笑顔……もうちょい近付いてみよ…わー、)」
あの穏やかでふわふわした茉莉花が、ストレスを感じているのか口の端が引きつっている。
そして寒いくらい冷房が効いているのに、額が汗でテカり始めた。
まさか泣きはしないだろうが大丈夫か。
明らかに場違いな客は周りのスタッフや女性客からもチラチラ見られて異質さが窺える。
何か出来ることは無かろうかと、俺は茉莉花のいるアドバイザーカウンターの隣のブランド化粧品コーナーへと入り込んだ。
「お客さま、何かお探しで」
「すんません、ちょっと見せて下さい」
「はぁ」
ここにおいては俺も充分に場違いな変な客なのだ。
申し訳ないと思いつつも棚の隙間から茉莉花を覗く。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる