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「(…やっぱり、)」

 俺がスキンを収めている引き出しは開きっ放し、箱は開いて1枚減っていた。

 つまりは茉莉花はそれを使ってコトに臨んでいるのだ。

 俺も1枚取ってポケットに忍ばせる。


 そしてそうっと抜き足差し足で寝室方面へ、開けっ放しのドアに近付けば…ブオンブオンとモーターの音がした。

「(当たり)」

 寝室のドアはベッドの足側側面に位置しており、廊下から横たわる茉莉花の脚が確認できた。

 座りではなく完全に寝ているみたいなので、低い体勢で入ればこちらに気付かれない可能性が高い。

 ばくばくと高鳴る心臓、ゆっくり這って寝室へと入る。


「あ、ぁ~♡らめ、あ、あん♡」

「(めちゃ喘いでる…)」

俺とのセックスと変わらないくらい派手に吠える茉莉花は、腰をぐねぐねくねらせては仮想パートナーを拒んでいる。

 まぁ予定調和というか様式美というやつか。

 「いや」と言いつつ強引に襲われるシチュエーションに酔っているのだ。


「あ♡そこぉ、らめ…そらくん、出る、れちゃう、う、」

「(相手、俺だった)」

 そりゃそうだろうがひとまず安心。

 他の男に襲われる妄想で濡れてるならそれこそ折檻せっかんものだ。

 しかし「出る」とは潮のことか、茉莉花のオナニー暴露からひと月ばかり経つが潮吹きは未だ経験していない。

 茉莉花は事後に「床を拭いてて虚しくなる」なんて言っていたが、それは愛液だけではなく自身の潮の後始末をしていたということだろうか。


「(見てみたい…)」

 AVみたいにぴしゃぴしゃ噴くのか、小便みたいにちょろちょろ流すのか。

 きっと茉莉花もそろそろ俺から帰る連絡が来ることは予測しているはずだ。

 夕飯を温め直したりする作業時間を考えると、ぼちぼちフリータイムの終わりを頭に入れつつクライマックスへと駆け抜ける時間帯だろう。


「そら、くん…あ、すきぃッ♡すき、ん~」

「(エア俺、めちゃ愛されてんなぁ)」

 俺に嫉妬するのもおかしな話だが、いざ茉莉花が想像上の俺に責められているところに出くわすと何とも言えない気持ちになる。

 果たして俺は茉莉花のバーチャル空よりも大切に彼女を抱けているだろうか。

 俺にして欲しいプレイをバイブにさせているのか、それとも俺にはして欲しくないからバイブを働かせているのか。

「(前までは優しいばっかりだったんだよな、今はちょいSな感じ)」
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