清純派彼女には秘密なんて無い、よね?

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
3 / 59
1

3

しおりを挟む

 同棲を始めた時に茉莉花には「俺は浮気は許容できない。他の男に気持ちが行ったなら出て行ってくれ」と伝えてある。

 責めないし追わない。

 心だとか体だけとかも関係無く俺だけで満足してくれないなら気持ちが切れてきっと修復が難しい。

 茉莉花は了承してくれたし、「しないよ」と応えてくれた。

 それどころか「いつでも見て良いし必要ならGPSアプリを入れても良いよ」とスマートフォンを差し出してくれた。

 流石にそれは断って、互いの信頼の下に生活していこうと誓って今日に至る。

 束縛したい訳じゃない、俺に寄生させたい訳じゃない。

 ただ当たり前に一緒に暮らして、どうにも堪らなくなった時にお手合わせしてもらえたらそれで良かったのだ。


 なので茉莉花がスキンをすり替えることは無いと思う。

 もし浮気していたとしたら相当巧みに隠しているので大したものだ。

 しかし茉莉花は日頃職場と家とスーパーくらいしか行き来しないし、休みの日の夜には「今日は家でこんなことしたよ~」と逐一報告をくれる。

 「ちょっと贅沢なレトルトカレーを食べてみた」とか「懐かしいアニメの配信が始まったから走破しちゃった」とか「お気に入りのパンプスのヒールを動画を参考にして打ち替えてみたの」とか。

 インドアもいいとこの過ごし方だ。

 ネット環境があれば本も読めるし買い物も出来るし、職場がごちゃごちゃと騒がしいのでひとりの休日を満喫したいらしい。

 俺と休みが被る日も大体そんな感じ、お洒落なランチをベランダで食べたりDVDを観たりと半引きこもりみたいに過ごしている。

 俺が居ない日に男を連れ込んで虚偽の報告をするなんて方法も無くはない。

 それは分かっているがそこを信じるのが茉莉花へ示す俺からの愛情だ。


「ふむ」

 スキンを取り出す時はいつも気がはやっているから注視しない。

 なのでいつからこの箱がすり替わっていたのかは分からない。


 何の参考にもならないだろうがパカと箱を開けてみると、俺は別の事に気付いた。

「…増えてる?」

 俺の愛用品は3枚入りのちょっとリッチなタイプで、試合数が少ないなら最大限楽しんでやろうと奮発したものだ。

 以前は6個入りを使っていたが、途中でこちらに切り替えて数箱目になる。

 1枚ずつ独立して台紙に挿してあるのだが、前回暗がりで探ったときに「これを使ったら次がラス1だな、注文しとこ」と思った憶えがあるし実際に注文してストックを横に置いている。

 なのに、箱の中には2枚のスキンが並んでいるではないか。

 はて避妊具をプラスしてくれる泥棒なのか。

 馬鹿な発想もまだ捨てきれないが…これは茉莉花の仕業で間違いないだろう。

 だが何のために?営みに消極的な彼女がスキンを補充しておいてくれるなんてことがあるのだろうか。

 さては穴が開いていて妊娠を望んでいるとか?しかし確認してみたが残りのスキンに不審な点は無いように見えた。


「……分からん」

 意図も目的も不明瞭だ。

 とにかく彼女の帰りを待って話してみることに決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

処理中です...