清純派彼女には秘密なんて無い、よね?

茜琉ぴーたん

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 同棲を始めた時に茉莉花には「俺は浮気は許容できない。他の男に気持ちが行ったなら出て行ってくれ」と伝えてある。

 責めないし追わない。

 心だとか体だけとかも関係無く俺だけで満足してくれないなら気持ちが切れてきっと修復が難しい。

 茉莉花は了承してくれたし、「しないよ」と応えてくれた。

 それどころか「いつでも見て良いし必要ならGPSアプリを入れても良いよ」とスマートフォンを差し出してくれた。

 流石にそれは断って、互いの信頼の下に生活していこうと誓って今日に至る。

 束縛したい訳じゃない、俺に寄生させたい訳じゃない。

 ただ当たり前に一緒に暮らして、どうにも堪らなくなった時にお手合わせしてもらえたらそれで良かったのだ。


 なので茉莉花がスキンをすり替えることは無いと思う。

 もし浮気していたとしたら相当巧みに隠しているので大したものだ。

 しかし茉莉花は日頃職場と家とスーパーくらいしか行き来しないし、休みの日の夜には「今日は家でこんなことしたよ~」と逐一報告をくれる。

 「ちょっと贅沢なレトルトカレーを食べてみた」とか「懐かしいアニメの配信が始まったから走破しちゃった」とか「お気に入りのパンプスのヒールを動画を参考にして打ち替えてみたの」とか。

 インドアもいいとこの過ごし方だ。

 ネット環境があれば本も読めるし買い物も出来るし、職場がごちゃごちゃと騒がしいのでひとりの休日を満喫したいらしい。

 俺と休みが被る日も大体そんな感じ、お洒落なランチをベランダで食べたりDVDを観たりと半引きこもりみたいに過ごしている。

 俺が居ない日に男を連れ込んで虚偽の報告をするなんて方法も無くはない。

 それは分かっているがそこを信じるのが茉莉花へ示す俺からの愛情だ。


「ふむ」

 スキンを取り出す時はいつも気がはやっているから注視しない。

 なのでいつからこの箱がすり替わっていたのかは分からない。


 何の参考にもならないだろうがパカと箱を開けてみると、俺は別の事に気付いた。

「…増えてる?」

 俺の愛用品は3枚入りのちょっとリッチなタイプで、試合数が少ないなら最大限楽しんでやろうと奮発したものだ。

 以前は6個入りを使っていたが、途中でこちらに切り替えて数箱目になる。

 1枚ずつ独立して台紙に挿してあるのだが、前回暗がりで探ったときに「これを使ったら次がラス1だな、注文しとこ」と思った憶えがあるし実際に注文してストックを横に置いている。

 なのに、箱の中には2枚のスキンが並んでいるではないか。

 はて避妊具をプラスしてくれる泥棒なのか。

 馬鹿な発想もまだ捨てきれないが…これは茉莉花の仕業で間違いないだろう。

 だが何のために?営みに消極的な彼女がスキンを補充しておいてくれるなんてことがあるのだろうか。

 さては穴が開いていて妊娠を望んでいるとか?しかし確認してみたが残りのスキンに不審な点は無いように見えた。


「……分からん」

 意図も目的も不明瞭だ。

 とにかく彼女の帰りを待って話してみることに決めた。
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