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面倒なやりとり、向いてないかも
5(最終話)
しおりを挟むあの別れの数日後のこと。
昼食休憩中に隣り合った親しい男性同僚から
「この前のケンカ、あれ何だったの」
と尋ねられた。
きっと事務所前での通話を見られていたのだろう。
「彼氏がさ、あ、元カレね。ソイツが、私の打つメッセージに飾りっ気が無いって文句付けてきてさ、反発したら醜い言い争いよ。元々はくだらないことでケンカして、ずるずる尾を引いててね」
「そうなん?絵文字だけで返すとか?」
「ううん、絵文字使わずに文字で端的に打つのが殺風景、みたいな。可愛げがどうこう。あくまで言い出すキッカケだったんだと思うよ。もっとベタベタした付き合いを求められてたのかも…ほら、私って恋愛経験無くてさ、ビギナーなりに頑張ったんだけど…好みに合わなかったみたいよ」
「ふーん…」
同僚はこちらに目線もくれず、菓子パンの袋をクシャッと潰す。
そして
「俺は、そのサラッとしてるとこ、好きだけどねぇ」
なんてため息混じりに言うもんだから、
「はぁ」
と色気の無い答えを返した。
「……」
「…え、何の話?」
「いや、何でもない」
「……」
小首を傾げてサラダの容器の蓋を開けて、数秒前のやり取りを頭の中で反芻する。
問い正そうと同僚側に顔を向ければ、今度はバッチリと目が合った。
「…メシとか、行かねぇ?愚痴、聞くよ…暇な時で良いから」
元カレへの不満なら、あの別れ話の夜に同期に話してとうに昇華させている。
「うん?うん…じゃあ今夜とか」
「……ふー…うん、今夜な」
もっしゃもっしゃとレタスを喰む私を視界に収めながら同僚は立ち上がって、何か余計に言いたげに唇を動かす。
「なに?」
「どんだけビギナーなんだよ……いや、またな」
「うんー」
あまり気にしたことが無かったけれど、アイツは面倒見の良い奴だったのだな。
良い仲間に恵まれたなぁと、休憩室から出て行く同僚を見送りサラダを腹に落とした。
数時間後の食事をキッカケに、その後同僚とそれ以上の間柄に進展するなんて…この時の私は知る由も無いのだった。
おわり
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