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面倒なやりとり、向いてないかも
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しおりを挟む終業後、ロッカーを開けて恐る恐る着信を確認してみた。
そこには『わかった』とだけ、実に簡素な返事が届いているだけだった。
「(自分だって素っ気ないんじゃん)」
互いの愛情ゲージがゼロになる瞬間を見るのは貴重な体験だったのかもしれない。
もし絵文字やスタンプをゴテゴテ付けられて交際への感謝を告げられていたら、気持ちは違っただろうか。
少しは良い思い出のままで終わらせることができたのだろうか。
「(でも、まぁ、)」
簡単な言葉だけでは冷淡に感じる、という彼の意見も聞き入れる価値はあった。
『どう思われるか』を意識した言動は、これから私もどこかでしていかなくてはならないのだろう。
しかし肩の荷が降りて、実に清々しい気分だ。
あとは真っ直ぐ帰るだけなのにもったいない程に精神が高揚している。
「ニヤニヤして、どうかした?」
サヨナラの挨拶を投げようとしていた同期が私を心配そうに覗き込んだ。
「ん?ふふ、身軽になってさ」
「なに、恋愛関係?昼に電話で揉めてなかった?その件?どっか呑みに行く?」
「そだねぇ」
今夜の肴は失恋話、私は同期にスッキリとした面持ちで「別れたんだぁ」とVサインを決めるのだった。
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