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『マリちゃん、お、俺と、付き合うてくれへんか?す、好きや…ねん…』
『うん、ええよー』
『あっさりしてんな…ええわ、よっしゃ、マリちゃん♡一緒に帰ろな、きしし…よっしゃ…』
………
『太ちゃん、友達から聞いたんやけど、また浮気してんねんて?最悪や、別れよ』
『待って、マリちゃん!最後まではシてへん、俺、イってへんから!』
『関係あるか!ボケぇ!二度と顔見せんなよ』
………
『マリちゃん、やった、市役所、通った!』
『やったな、おめでとう!お祝いやな、ふふ…ん♡』
『ん…マリちゃん♡なぁ…お祝いやろ?マリちゃんの手で…大っきくして、お願い、』
『今日だけやで…』
『は…あ、やば…マリちゃん♡あったかい…この前の女はゴテゴテのネイルが当たって痛かってんな、やっぱ清潔感あるマリちゃんの手が1番やな…』
『あ?』
………
「は、…夢か…走馬灯みたいやったな…」
オープニングセールから過ぎること数日、客数の少ない平日に休みをもらいマリは体を休めていた…のに悪夢で飛び起きた。
地元の隣だけに客の中には知った顔もいて、しかしレジもセルフだし売り場に立つこともあまり無いし、いちスタッフの顔など誰も気にしてはいなかったようだ。
しかし店舗の情報はホームページに掲載されているのだから、虱潰しに訪問すればいずれの日か出会す。
もっとも、その店舗数が系列店を含め全国で2000を軽く越えるのだから容易ではないだろうが。
「あー…胸糞悪い…忘れてたのに…」
冬だというのにインナーの中は嫌な汗で濡れていた。
これは本人曰くだが、太獅にとってはセックスは趣味や習慣、言い方は悪いが排泄にも似た行為で、マリ以外の女性の体はオナホールと同じくらいの位置づけであるらしい。
最中はそれなりに優しく紳士的に相手をするが終わってしまえばただの器、作り笑いでさっさと解散してしまうそうだ。
『しやから、マリちゃんは特別やねん。俺が愛情もってエッチしてんのはマリちゃんだけや!』
これもいつぞやの土下座の際に言っていた言葉で、言われる側としては嬉しいはずもなく、ただただこんな奴に抱かれた女性が不憫なのと同時に許してしまう自分も同類だと情けなくなった。
『ナンパについて来るような女、それ相応の対応でええやろ』
とも言っていたか、まことに腹立たしい男だ。
「ふー…サウナでも行くかぁ…」
マリは入浴セットを持って、近くのスーパー銭湯でひとり癒しの時間を楽しむことにする。
『マリちゃん!銭湯なんか行ったらあかんて!露天風呂なんか誰が覗いてるか分からへんぞ!』
そんなことも言っていたな、構わず行っていたが、時折見せるああいった過保護な部分も好きは好きだった。
ひとりになった、大切にされていたはずなのに慣れ過ぎてしまってときめきも無くなって。
いっそ同棲でもして常に一緒に居れば浮気もされなかったのか、マリは今さらの解決策に「へっ」と笑いがこみ上げる。
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