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episode:9…救世主
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しおりを挟む繋いだ手は引かれる訳でもなくただ握られているだけで不安が募る。
いっそ篤人が「田舎に帰りな」なんて言ってくれれば従うのに、と解決も人任せにしてしまう。
「とりあえずごはん食べよう?初のバイト代入ったから奢るよ」
「そうなんだ」
「うん、ボクも頑張ってるよ…珠ちゃんとの将来のためにね」
「篤人…」
そう言えば随分と逞しくなったものだ。
見た目のイケメンリア充ぶりに頼り甲斐までプラスされてスパダリ感が強い。
もうあの頃の狡くて卑怯な篤人じゃないんだな。
日和見でナヨナヨしてて弱虫で私に守られてた篤人じゃないんだな。
そんな篤人に私は必要なのかな…きっとモテるし同じようなリア充どもに囲まれて毎日楽しく過ごしていることだろう。
まだ私と同じところまで降りて来れるのか。
ダサくてモサいこの私を連れて歩いて、「恥ずかしい」と心の底から思わずにいられるのか。
「珠ちゃんの柔らかい手が好きなんだ。ボクを何度も守ってくれた手…適正体重になるまでまた太ってもらおうかな」
「…みっともないだろ…」
「不摂生でギスギスしてる方がみっともないよ。んー…一緒に住めたらなぁ…色々お世話してあげられるんだけど」
「うん…」
お前は以前私に「自分を助けることで優越感を感じてたでしょ」と言ったが、今お前がしようとしてるのも同じことじゃないのか。
見窄らしい私を手入れし面倒を見ることで優越感を得ようとしてるんじゃないのか。
あるいは徳を積んで何かに役立てようとしてるんじゃないのか。
私を助けたって私と家族以外に感謝されることは無い、それも分かってる、篤人の気遣いには何の裏も無いんだ、本心で私を心配してやってくれていることは分かっている。
だから辛いんだ、ここまでしてもらってももう私はお前に返せるものが無いんだ。
これしか、無いんだ。
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