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episode:2…格差
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しおりを挟む「……(オタクにも人権をー…)」
まぁたかが数年遊んだだけの異性の友達なんてこんなもんか、そりゃそうだよなと分かっていたのにガックリくる。
「うん…ねぇ、ID交換しよ、スマートフォン?」
「いや、ガラケー」
「そう、じゃあメアド教えて」
篤人は最新のスマートフォンをポケットから取り出して、メールボックスを開き私の顔を澄んだ目で覗き込んだ。
聞いてどうするんだろう、何を話すんだろう。
まぁ劣等感に苛まれたら受信拒否すれば良いかとメールアドレスを教えてやる。
「ん、ありがと…ねぇ、珠ちゃん、彼氏とか出来た?」
「居るように見えるか?」
「見えるよ、珠ちゃん相変わらず可愛いもん」
「はぁ?」
何のサービスタイムだろう、多少は見栄えが良くなったとは思うが世間的に言うモテ女子ではないし褒めても可愛らしい照れ隠しなんて出てこない。
これはたぶんパグとかフレンチブルドッグが『ブサかわいい』みたいな愛嬌を無理やり褒め所としてピックアップしてくれているのだろう。
さすがリア充はおべっかも上手いねなんて皮肉りたくなる。
「中学生の最初くらいってさ、みんな色気付くじゃない?珠ちゃんに話かけに行こうとしたら男子に止められたんだ。『男子と女子が話してると付き合ってるってすぐ噂になる』って。だから、迷惑だと思って話しかけらんなかったんだ」
「ふぅん」
「ボクみたいな男と噂になったら珠ちゃん困るだろうし、そうしてたら周りに人が増え出して…登下校も誰かしら張り付いてて珠ちゃんに会えなくなっちゃって」
「へぇ」
「珠ちゃんの家の前で待ち伏せとかもしたんだよ、でも隣のカミナリおじさんに追い払われて…『警察呼ぶ』って言われて情けなく撤退しちゃったんだ」
「ほー」
渇いた笑いと心の無い合いの手が篤人の空々しい話をさらに白けたものにさせる。
全てが嘘とは思わないが、自分の罪を軽くしようとする責任逃れの言い訳に感じた。
だって隣に住んでいた気難しい通称・カミナリおじさんは私たちが小学校を卒業する前日に脳出血で倒れて横浜の息子さんの家に引き取られたのだ。
中学時代にはもう家も更地になっていたはずだ。
なので篤人は本当はうちの前さえ通ってないのだろう。
まぁ通学ルートから外れるしその嘘自体を責めはしないが信憑性を持たせるためにエピソードを盛ったのが裏目に出たようだ。
「珠ちゃん、聞いてる?…あ、電車、もう時間?」
「いや、あと10分はあるけど……それでもひとりになる時間はあったと思うけどな。監禁されてる訳じゃないんだから」
「……」
「お前さ、なんだかんだ言ってるけどリア充になってダサい私と連むのが恥ずかしかったんだろ?」
「っ……やだな、そんなこと…」
「いいよ、今よりデブでみっともなかったもん。仲良くしてたら篤人の株が下がるだろうし」
ここまで卑屈になるのも癪だがこれで嫌われればメールも送られて来ないだろうし心穏やかに過ごせるのだ。
どうせならとことん嫌な印象を与えてから去ろうなんて思った。
澄ましてる感じが鼻につくし台本みたいな話し方が気に障る、要は私は良い子ぶった篤人にイラついていたのだ。
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