幼馴染はイケメン高学歴リア充、だけどぽっちゃり喪女の私に夢中でなかなかの変態だからもったいない。

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
83 / 85
epilogue…

83

しおりを挟む
ディアマンテ達が立ち去ってから間もなく、潮が満ち、祭りの始まりを告げるピッフェロが鳴り響く。

司祭の祈りの言葉の後に、エドアルドが集まった国民に向けて短いスピーチを行うと、それぞれ用意された祝祭船ブチントーロやゴンドラ船に乗り込んでいく。祝祭船ブチントーロは基本的に王族や聖職者、そして上位貴族が乗り、ゴンドラ船には下位貴族や平民が乗るという決まりがある。

「まさか、船に乗るのも初めてか?」
「はい」

不慣れな足取りで、恐る恐る先頭の祝祭船ブチントーロに足をかけるクラリーチェを見兼ねたエドアルドは、軽々とクラリーチェを抱き上げた。

「きゃあっ!」
「しっかりと私に捕まっていろ」

言われなくても、クラリーチェは突然の事に、エドアルドの首にしっかりと腕を巻き付けてしがみつくしかない。
エドアルドはクラリーチェを抱えたまま、ひらりと船に飛び移る。
それは、巷で流行している恋物語の一節のようだった。
リリアーナをはじめとした、令嬢達から黄色い歓声が上がった。

「わざわざ目立つような事をしなくても良いと思いますが………」

後ろからついてきたラファエロが、やや呆れ顔で呟く。

「国王とその婚約者が仲睦まじい所を見せるのも、大切なのだろう?」

エドアルドはにやりと嗤う。
その言葉を聞き、クラリーチェは大衆の前でエドアルドに抱き上げられている事に気がついた。

「お、降ろして下さい………、エドアルド様っ」
「初めて船に乗るのであれば、酔ってしまうかもしれない。波は穏やかだとはいっても、かなり揺れる。大人しく私の腕の中にいた方が安全だ」

すっぽりと後ろから、抱きしめられればクラリーチェは抵抗のしようがない。
顔を真っ赤に染めながら、クラリーチェは恥ずかしそうに俯いた。

同じ祝祭船ブチントーロには、ラファエロと司祭、そしてダンテを含む護衛の近衛騎士と船の漕手が乗り込んだ。後続の船にはディアマンテ、ブラマーニ公爵夫妻とジュストとリリアーナ、フェラーラ侯爵夫妻が乗り込む。
船の船尾には、キエザの象徴である青地に白い獅子が描かれた旗が掲げられる。

「出航!」

エドアルドが声高らかに告げると、一斉に漕手達が櫂を動かす。
太陽の光を反射した水面がキラキラと輝き、クラリーチェは眩しさに目を細める。
頬を撫でる潮風が心地よく、クラリーチェはエドアルドの胸に頭を凭れさせた。

ふと後ろを振り返ると、リリアーナがクラリーチェに向かって手を振っていた。
その後ろにも続々と船が連なり、沖を目指していく。
クラリーチェはリリアーナに手を振り返すと、再び進路方向に視線を移した。
波が、船首部分にぶつかって弾け、小さな飛沫となってクラリーチェの顔にかかる。

こんなに近くで、海を感じたのは初めてで、クラリーチェは嬉しくなり、思わず微笑んだ。
………それが、絶望への船出だとも知らずに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

大好きな幼馴染と結婚した夜

clayclay
恋愛
架空の国、アーケディア国でのお話。幼馴染との初めての夜。 前作の両親から生まれたエイミーと、その幼馴染のお話です。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

処理中です...