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episode:10…質量保存
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しおりを挟む「うあ、あつ、と、とめ、て、」
「やだ、ほら、唐揚げと、ボクのおちんちん、どっちが美味しいッ?ねぇ、珠ちゃん、もぐもぐして、美味しいね⁉︎」
「噛めねェっ…ゔあ、こぼれるッ、篤人ッ!」
「あー、美味しいなァ♡珠ちゃんを齧ったら美味しいのかなァ?」
「変態、食ったら減っちまうぞッ」
それは単純に『私』という物質の質量が減ってしまう、それくらいの意味の発言だったのだが篤人には刺さったのか、はたと腰を止めて
「そうか、減っちゃうから嫌なんだ!」
と明るい声で叫んだ。
「え?」
「痩せると珠ちゃんが減っちゃう、だからボク珠ちゃんが痩せるの嫌なんだ」
「…太ったら?」
「珠ちゃんが増える」
「間違っちゃねぇだろうけど…なんか特殊な考えだな」
「そうかな、好きなものはたくさんあった方が嬉しいじゃない」
それはコレクターゆえの考えか。
納得できるようなできないような、目から鱗でも落としたかに見えた篤人はまたずんずんと腰を元気に動かして、やれ「もっと食べて」だの「下のお口も動かして」などと戯言をぬかす。
死んだら骨だけになって壺ひとつに収まっちゃうくらい小さくなるんだもんな、だったら今これだけの質量を持った生きてる動物ってのはそれだけで尊いことなのか。
篤人の嗜好をなるべく思想にしてやりたくて私はグラつく頭で論理を組み立てた。
しかしそれも途中で有耶無耶に、つくづく堪え性が無いもんだなと自分が情けない。
「あッ、あ、アっ」
「声、出るねッ」
「押されてッ、物理的、にィ、」
「ん、演技じゃないなら良い、もっと聴かせて♡」
「ぶエ」
胎を押されて機能の弱まっている胃腸が異常を感知、口内に食べた物が戻っては皿へ返して水分を補給する。
チラと振り返った時見た篤人はすごく辛そうな顔をしていて、口では好きに言う割に心配はしてくれているのだなと…でももう少し胃に優しいメニューを選んで欲しかったななんてひとりそう思った。
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