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episode:13…一生の趣味

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 ミュージシャンとか芸術家とかアイドルとか、やりたいこと・好きなことを突き詰めて取り組むには相当の努力と覚悟と才能が必要だ。

 そして好きなことを仕事にすると趣味として楽しめなくなるとも聞いたことがある。

 私みたいな者はあくまで趣味として「楽しめる」範囲に留めておいた方が平和なのかもしれない。


「珠ちゃんはそんな器じゃないんだよ」

「わざわざ傷付く言い方すんなよ」

「適性ってあるんだよ。『好き』で留めておいた方が良いこともある…クリエイターになったら楽しくゲーム出来なくなるかもよ」

「それは思ってた」

「珠ちゃんは作るのは向かなかったんだよ。でも販売したり広めたりするのは楽しく出来るのかも…一般的な消費者だったんだよ」

「いちいちトゲトゲしてんな」

「ボクもそうだよ、これといって秀でたものは無い。広く浅く好きなことをして、生きるために働くだけ。だからこそ好きな人と結婚したいし愛し合いたい、趣味で充実した私生活を送りたい」

 私はお前の娯楽たり得るのか?まぁ何年も楽しんで抱いてるんだから長持ちしてる趣味とは言えるが。

「ふーん…篤人も、勉強で悩んだりする?」

 さらり「無いよ」と答えるかと思いきや、篤人は

「それなりに」

と目を細める。

「そうか」

「上には上がいるからね。ボクはそこまで登り詰めたいなんて思わないからそこそこで良い」

「もったいねぇ…お前賢いんだから、私の代わりにゲーム作れよ」

「やだよ、ボクも消費者で良いんだ」

「絵とか描けるんだろ?」

「落書き程度だよ…珠ちゃんさ、制作は趣味として続けてみたら?」

犬の次は猫か、篤人はごろにゃんとばかりに顔を私の肩に擦り付けて、その口はまるで『ωオメガ』になっておりなんともあざとく可愛らしい。 

「どうやって?」

「テキストは買ってるでしょ?基本は分かってるんならあとは時間かけてさ、シナリオ作ってコード作って、同人でゲーム出しちゃいなよ。そもそもさ、在学中にどうにかしようと思ったからつまずいたのかもよ?遅咲きのクリエイターでも良いなら数年後に再挑戦しても良いし」

「いや、お勉強はもう良いわ…しかし同人か……考えたこと無かったな」

「ボクも手伝うよ、それを二人の趣味にしよう。んでコミケで売ろう、ボクがコスして売り子するから」

 話が大きくなってついて行けないが未来に差した明るい光。

 あの大きな会場に席を並べる私とフラッシュを浴びる篤人、もちろん最初からそんなメジャーマーケットに出られはしないだろうけれど情景がありありと浮かんだ。

 インディーズから火が付いてアニメ化される作品だってあるくらいだ。

 趣味で終わらせるにしてもゴールがあれば目標として掲げて時折確認しては生活の励みにできるだろうか。

「でも締め切りに追われたら嫌になるかも」

「完成してから申し込めば良いんだよ。失敗を気にしないで、もう珠ちゃんは充分挫折したじゃない」

「まぁな」

「珠ちゃんが望むなら、ボク…脱いだって良いよ♡」

「エロゲか、んー…良いかもな」

 篤人を攻略して陵辱する18禁ゲームか、ほいほいとモデルしてくれそうだし奴は私より文才もあるから台詞回しなんかも上手く描いてくれそうだ。

 オタクカップルの行き着く先の最高峰じゃあるまいか、二人で同じものを作って生きていけるなんてありがたくて尊くて。

 人に大々的に自慢できないのが悔しいくらいには理想の在り方じゃないか。

「ね、楽しいことしよう、それで…アマチュアゲーム作家夫婦になろ♡」

「エロゲ作家だと顔出しできねぇな」

「そこら辺はバーチャルで良いんじゃない?……あ、珠ちゃんが顔出しとか言うから顔に出したくなっちゃった。責任取ってよ」

「は?やめろよ、やだ、やぁ‼︎」
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