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episode:12…好きじゃなくて
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しおりを挟む今夜が二人の東京での最後の夜だ。
篤人はここから通学するし朝はバタつくだろうから今のうちに言っておこうかと
「…篤人、ここに泊まらせてくれたり奢ってくれたり、本当に救われた。やり直そうって気持ちになれた…心からありがたいと思ってる」
と神妙に礼を述べる。
「…うん」
「でも私はここじゃ無理だ、分不相応…地元に帰ってそこから始める」
「うん」
「篤人を置いてっちゃうけど…それなりに楽しくやってるみたいだし……あの、色々寂しくなったらその…私にバレなきゃ浮気とかもして良いし、その…もっと良い子…いると…思うから……あの…」
そもそも私が上京しなければ篤人は地元進学・地元就職で考えていたらしい。
本人の意志ではあるが連れ出しておいて置き去りにする罪悪感が私を変に饒舌にさせる。
私に拘らなくて良いんだ、「面倒臭い女だ」と捨ててくれたって構わないんだ、お前と再会しなきゃ彼氏いない歴を更新するだけの喪女だっただろうから。
ひとりになったって耐えられるさ。
それどころかたまに会って性欲を解消する器に使ってくれたって許されるくらいの恩は受けたんだ、地方妻みたいな扱いだって我慢できる。
けれど篤人は上手だった。
「舐められてるなぁ…ボクに『そんなことしないよ、珠ちゃんしか居ない』って言わせたいんだろ」
と再び安作りの首輪に手を掛ける。
「コレでこの部屋に繋いどいたって良いんだよ?さっきみたいにおしっこも全部垂れ流す本当の家畜の小ブタちゃんにしたって良い」
やはり拘束する意図もあったんだ、ひんやりした指が鎖骨を撫でると背筋が伸びて腰は逃げよう逃げようと退けてくる。
「恐えぇな!…だって私、何にも…お前を繋ぎ止めておけるようなもん持ってねぇんだよ、目移りしたら仕方ねぇ…」
「分かったよ、どうしても辛抱堪らなくなったらナンパしてキレイなお姉さんとエッチするよ」
「………うん」
滅多に会えなくなるし浮気したってバレないし私より相応な女性がいるかもしれないし。
控えめに寛容さを表したつもりが、篤人はかつてないくらい人相を崩して
「ボクからの愛をどうして信用してくれないかな」
と泣きそうな顔で私を睨んだ。
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