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episode:8…足りない熱量
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しおりを挟む入学してひと月のゴールデンウィーク、原宿へ買い物に出てその人の多さに慄いた。
物価の高さやアルバイトの時給の高さにも驚いた。
「すげぇ街だな」
「うん…ドキドキするね」
「緊張してんの?リア充のくせに」
「見た目だけね…慣れたら何でもないんだろうけど」
そう言う篤人はビジュアルはもうすっかりこの街に溶け込んでいる。
美容室も行ったそうだし、隣に立つ私は地元から持って来た洋服が途端にダサく感じて居た堪れない。
アパートはもっと郊外の方に借りているからもう中心地まで出ることはそんなに無いだろうな。
まぁ篤人となら色んな場所を巡ってみても良いと思えたが…落ち着かない。
オタクの聖地・秋葉原も行ってみたがワクワクより「うわぁ」と引いてしまう感じ、それはもちろん人の多さと活気とそこに蠢く熱量に対してである。
「なんか…ざわざわし過ぎて疲れるな」
「地元もそこそこ観光地だから人は多いけどね」
「うちらの家は中でも田舎だろ……篤人、学校はどう?」
「うん、楽しくやってるよ…予習復習で忙しいかな…来月からバイト始めたりしようかなと思ってる」
「うへ…すげぇな」
「珠ちゃんは?」
尋ねれば当然私も聞き返されることは分かっていた。
でも聞こえなかったフリをして
「あ、クレープだ!あれ買って食ってから帰ろーぜ」
と通りの先にある店を指して足早に目指す。
「………うん」
「種類多いな、どれにする?」
「…えっとねぇ…」
「楽しいな、篤人」
「うん」
買ったクレープは歩きながら食べて駅でそれぞれの改札へと向かう。
篤人は私の様子に何か言いたげだったが黙っていた。
お互い独り暮らしだが予想外に篤人は私へそこまで執着して来なくて、自分の学業で手一杯ということでデートも出来ていない。
引越し荷物を片付けたり生活用品を揃えるのに土日を費やして4月末にはオリエンテーションセミナーとかいう2泊3日合宿に出掛けて帰って来たところ、授業の課題も早速出てバタバタらしい。
生活に必死で恋人にまで気が回らない。
さすがの篤人もスーパーマンではないということだ。
ちなみに私のアパートは女性専用なので男子禁制、篤人も初年度は大学寮から通うのでこちらも部外者立ち入り禁止、信じられないことだが上京してから一度もセックスをしていない。
そしてよくよく考えれば毎度ホテルに費やすお金も無い。
篤人は盛っていた昨年が嘘みたいにストイックにリア充ライフを満喫しているようだ。
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