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episode:3…君に決めた
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しおりを挟む「んで?私にどうしろと」
漫画みたいなモテ話はもうお腹いっぱいだ。
立つ場所が違うからマウントとも思わないけれど、モテ自慢は聞き続けても何の実りも無いしありがたみも無いし湧き出す感情も無い。
少し早いけど手持ち無沙汰だし買って来たパンでも食べようかな、手元のビニール袋からハムと玉子フィリングの詰まった揚げパンを取り出して開封した。
「珠ちゃん、珠ちゃんはボクが唯一こんなに気楽に話せる女の子なんだ」
「そうかい……美味しそー、いただきます」
「この前駅で再会して、良いアイデアを思いついたんだよ」
「美っ味…安定の美味さ」
「…珠ちゃん、ボクと、エッチしてくれない?」
「……」
こいつ何言ってんだ。
揚げパンの美味さに感動していた思考回路がプスンと煙を吐いて運動停止、反対に体の神経は冷静にベンチのビニール袋の上へパンを置き直す。
「……珠ちゃん?」
口の中は衣の油っぽさが舌に絡み付いて不愉快だ。
おどおどとこちらを窺う阿呆の顔もなまじ整ってるだけに余計不愉快だ。
私は麦茶で口内のパンの残骸を喉へ流し込み、下ろしたリュックの肩紐を掴んで
「……殴る」
と振り回す準備に入った。
「なに、何で⁉︎やだ恐い‼︎」
「殴る。お前みたいな奴で処女捨ててたまるか」
「ごめん、唐突な話でっ…カバン降ろしてよ、それ何か入れてる?こわ、痛いのやだ!」
立ち上がってぶんとスイングすればリュックの底の辞書が遠心力で大きな弧を描いて、篤人は「やべぇ」と顔を引きつらせて二宮金次郎の台座に回り込む。
「私だって痛いの嫌だわ!」
「痛くしない、しないように気を付けるから」
「馬ー鹿っ!キモいこと言ってんなよ、ハゲ‼︎」
「やめて、ボク禿げてないよ!」
「うるせぇ、逃げんな!」
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