幼馴染はイケメン高学歴リア充、だけどぽっちゃり喪女の私に夢中でなかなかの変態だからもったいない。

茜琉ぴーたん

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episode:2…格差

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 高校生になった篤人に初めて会ったのはゴールデンウィーク後の5月のはじめ、友人と街まで出掛けようと最寄駅まで出向いた時だった。

 黒い詰め襟のカラーにぴっと白い2本のライン、ここらであまり見ることの無いその制服に身を包んだ篤人が自転車にまたがって駅舎の前に待機していたのだ。

 ワックスで整えた髪に軽薄そうな二重の目、おそらくリップを塗っているのだろうか薄ピンクの唇が白い肌によく映えている。

「あ…」

 ぱっと見で篤人だと分かったが声を掛けるのもはばかられるので無視をした。

 向こうも私に話しかけられるのは迷惑だろうと思ったからだ。


 この頃の私は160センチに58キロ、中学3年生になって始めた徒歩通学とウォーキングがじわじわ効いたし身長がまた伸びたこともあってすんなり肉が落ちた。

 そこまで細く見えないのは骨格のせいだろうが、BMI値だけで言うと適正体重にほど近いすっきりとした見た目になったし制服もLサイズでなんとかいけている。

 しかし

「(見られたくないな…)」

中学3年間で身に染みた格差がこの体を縮こませるのだ。

 美しい孔雀くじゃくの前を芋臭いかもが背筋を伸ばして通り過ぎることなんてできない。


 それなのにそうっと目線を合わさず改札を通ろうとすると後ろから

たまちゃん⁉︎」

と懐かしい篤人の声が叫んで、しばらくぶりに呼ばれた名前に胸がドクンと高鳴った。

 バクバク暴れ出した心臓を押さえつつ表情を作り振り向けば昔と変わらないとろける笑顔の篤人がいて、私は友人を先にホームへと送り出して引き返す。

「篤人…?」

「うん、珠ちゃん、久しぶり。どこか行くの?」

「ん、街まで…篤人は?」

「学校から帰って来て、人と待ち合わせしてるとこ。うわぁ、久しぶりだねぇ、元気してた?カメショーだよね?…ちょっと痩せたんじゃない?きちんと食べてる?」

「うん…」

なんだ変わってないな、気さくな会話にあの頃が戻って来たようでホッとした。

 でも見れば見るほど見た目も雰囲気もイケメンな篤人は話し方や立ち姿が演技臭くて、なるほどこれは高校デビューなのかな、なんて失礼な想像をしたりもする。

 当たり障りない無難で上辺だけの会話、居心地の悪さを感じて目を伏せれば篤人は「ふぅ」と嘘くさいため息を吐いた。

「…珠ちゃん、中学に入って、なんかボクら話さなくなっちゃったじゃない?ずっと気にしてたんだけど…」

「まぁ、篤人はリア充になっちゃったからな」

「なにそれ、珠ちゃんが話しかけなくなったんでしょ、ボクはもっと仲良くしたかったのに…」

「そう、なんだ」

 嘘だ、私は太ったし尖っていたけど本性はそう変わらなかった。

 変わったのは篤人の方だ。

 私や友人が「オタクきもい」と聞こえる陰口でさげすまれていても止めなかった。

 一緒になって笑いこそしなかったけれど、その輪の中に居たのだからほぼ同罪だと思っている。


 一応言い訳するが、私たちは周囲にオタクをアピールしていた訳ではない。

 好きな作品の缶バッジをペンケースに付けたりキャラクターマスコットを鞄に提げたりアニソンを昼の校内放送でかけてもらえるようリクエストを出したりと…勝手にオタク臭が滲み出てしまったに過ぎない。

 それに布教活動なんて仲間内でしかしてない。

 R指定の付いたブツは必ず紙袋に入れた上でバッグtoバッグで闇取引をしていたし視覚的迷惑も掛けていなかったはずだ。

 私の見た目が見苦しいということであればそれはもうお手上げだ。

 でも髪は毎日洗っていたしフケも無かったし、自力でどうこうできる範囲の身だしなみは気を遣っていたのだから責められるのは不当だと思う。
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