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episode:11…本当はね
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しおりを挟むそして翌日。
篤人が留守の間に求人情報なんかを調べていると、神奈川の実家から一番近い家電量販店・ムラタのレジ・品出しスタッフの募集広告を発見する。
客として利用したこともある馴染みの店舗だ。
よくよく考えれば学費はまだしも家賃を払い続けてまで東京に居る必要も無し、実家からの通いならやっていけそうな気がした。
学歴は高卒になるが仕方ない…在籍し続けたところで健康に卒業できる見込みも無いのだし。
公式サイトから募集フォームに入力して応募は完了、夕方にはムラタ甕倉北店の採用担当者から直に電話が入り面接日の打ち合わせをした。
とりあえずは一歩進めた。
あとは親に話したりアパートを引き払ったりとやることだらけだが気持ちが軽く楽になる。
「…んでな、明日実家に帰って、明後日、面接に行ってくるわ」
「ふーん…じゃあそのまま実家に滞在する感じ?」
「採用結果と勤務日によってはそうなるかな、だから申し訳ないけど宿泊は今夜が最後だ。明日の分はキャンセルで…もちろんキャンセル代は返すから」
「んー…まぁ良いけどさ…」
帰宅して私の報告を聞いた篤人は明らかに不満げで、私の再出発の足掛かりができたにも関わらず祝いの言葉も無かった。
「んで…休みを使用しながら引っ越しかな」
「ふーーーん……ムラタってこっちにもあるよね、なんで東京で探さなかったのさ」
「だから家賃とかの関係で。稼いでも払っちまうなら貯まらねぇし…篤人にも負担掛けちまうし」
「ボクは構わないんだけどなー…せっかく珠ちゃんを独り占めしてやろうと思ったのに」
「今でもそうだろ」
買ってもらったコンビニパスタを遠慮がちに啜れば、出資者である篤人は
「ボクに依存するくらいメタメタに洗脳してみたかったのに」
とサイコなことを口走る。
「こっわ」
「愛欲に塗れたぐちょぐちょの生活ができると思ったのに」
「今でもそうだろ…昔もそうだった」
「足りない、もっと…珠ちゃんが欲しい」
「…体か?」
「違う、全部……ごめん、せっかくの再スタートなのにワガママ言って…寂しいんだ」
「そっか」
飄々とした篤人なりにもホームシックとかあるのかな。
話せる相手の私がこんな状態だから弱音も吐けずに溜め込ませてしまってるのかな。
こちらこそ我儘だったと謝ろうと思えば奴からは予想しない言葉が飛び出した。
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