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episode:6…篤人の決断
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しおりを挟むその後帰りながら聞いたのだが、篤人は嫌がらせについては担任教師にも早いうちに訴えていたらしい。
私には強がっていたが逃げ道は確保しようとしていたのだ。
しかしことなかれ主義の教師は表沙汰にせず注意もせず、「嫌なら態度を改めるか転校したら」と言われたので日和見な篤人もいい加減プチンと来たそうだ。
篤人の親は「モテ過ぎて苦労するわねぇ」とのほほん構えていたらしいが一番怒り心頭だったのは一緒に住んでいるお祖父ちゃんだったそう。
篤人の入学時に奮発した学校への寄付金を返すよう理事長室まで乗り込んで怒鳴り回したのだとか。
「篤人のじいちゃん、詩吟やってっから声通るよな」
「うん、そう。廊下の端まで響いてたって」
「さすが師範代」
「…そのおじいちゃん…ここらの地主だからさぁ、お金は持ってるんだよね。ボクの学生生活が良くなるならって寄付してくれてるのにこんな扱いされちゃねぇ?可愛い孫のために動いてくれるなんてありがたいよねぇ…親戚辿れば議員さんとかもいるしさ、コネ総動員だよ」
「イケメンで実家が資産家とかチート機能搭載しやがって…にしても、私立って理事長とかいんだな…漫画みたいだな」
「うん…とことんやって来たよ。犯人は分からないけどされた事は全て記録に残したし写真も撮ってある。あとは『警察とマスコミに言いますね~』で青くなってたよ」
「理事長が?」
「教師も。いたずらに学校の評判下げたくないけどさぁ…馬鹿馬鹿しいよね、まったく…保留にして帰って来たところ」
風を切って自転車を走らせる篤人は清々しい顔をしていて、ここ最近のどんよりした雰囲気が晴れやかになっていてイケメンに拍車が掛かっている。
覚悟を決めたんだな、日和見のくせに敵を作って我を通したんだ。
尊厳を守るために至極当然の行動だが篤人がそれを実行できたという点が私にとっては珍しいことだった。
「でもさ、その…辞めてどうすんだよ」
「大検受けて同級生と同じタイミングで大学受験するか、他の高校に入り直すか。定時制にっていう手もあるけど…4年掛かっちゃうからなぁ」
「そっか…高校の転校って難しいんだな」
「籍だけ残して登校拒否してバイト三昧っていうのも楽しそうだけど…私立だから容赦なく留年させられちゃうかもね」
「なんで篤人だけそんな目に遭わなきゃいけないんだよ…悔しいな…」
「ありがとう、心配してくれる人が居るってだけで心強いよ」
「んー…そりゃ心配だよ」
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