34 / 85
episode:6…篤人の決断
34
しおりを挟む生理も山場を越えて自転車を漕ぎ易くなった月曜日の放課後。
帰宅するとうちの玄関の前に見慣れた自転車と、しゃがんでダンゴムシみたいになった篤人が居た。
「篤人?」
「…おかえり、珠ちゃん…はぁー、キツかったよ」
「何、もう虐められた?」
私も自転車から降りて所定の位置に停めて、表では目立つので浮かない顔の篤人を家に入らせる。
陰湿なやり口の嫌がらせをされたのか、私の部屋へ入るや否や篤人はベッドへとダイブして私へ手招きした。
「珠ちゃん、添い寝して」
「…生理中だぞ」
「知ってるよ、何もしない。ただの添い寝だってば」
「まぁ…着替えてからな」
スカートのプリーツの折り目がシワになるのが嫌で、更衣室でやるみたいにもぞもぞ手品みたいに普段着へと着替える。
セックスするわけではないから下着姿を見られるのが恥ずかしいのだ。
でも別室へ逃げるのも意識しているようで癪だなと思った次第である。
「…今朝学校行ったらさ、カノジョとそのトモダチに囲まれた。『恥かかせてどういうつもりだ』って…どうもこうも無いよ、体の相性なんだからさ」
「まぁ…そうなのか、な?」
「個人の性事情を人に話すのもどうかと思うけどさ、驚きの情報拡散力だよ、クラスの子もみんなボクとカノジョが別れたことを知ってた。そんで3年生の男子に呼び出されてさ、『俺の元カノに何してんだ』的な…臭い息で言うわけさ、もう…どうでも良いよ、ボクを攻撃して元カノとヨリ戻すとかダサ過ぎじゃんか…好きにしろよって」
「言ったのか?」
「言えるわけ無いじゃーん……ヘラヘラかわしただけ、ダッセぇの……ハァ~…」
保身は成功したのか、しかし悔しそうな顔で篤人は私を抱き締めて一際大きなため息を吐いた。
進学校なくせに色恋に忙しいなんて変なの、それとも賢いから恋愛に割ける余分な時間があるのか。
首に掛かる息がやはりくすぐったい。
「んで…私のことを言ったんだろ?」
「うん…そしたら『別れてすぐ新しい彼女を作るとは何事か』って…ギャンギャンうるせぇの、風紀委員かっつーの。んでカノジョが出て来てさ、『私のために争うのはやめて~』みたいに元カレに抱き着いて元サヤ?みたいな…完全2人の世界だったよ、ボクを邪魔者に仕立て上げてうっとり浸ってたわ」
「へぇ…そいつ、その元カレって篤人よりイケメンなのか?」
「どうだろ。実家が開業医でトーダイ志望らしいからボクより賢いんじゃない?将来有望ってこと」
「じゃあ丸く治ったんじゃん?」
「そこはね。でもさっき帰りに靴の中に画鋲が入ってた。踏まなかったけど…嫌がらせ開始って感じかな」
昔されたいじめを思い出すのだろう、篤人はこの先起こり得る事態を想像して身を震わせた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる