2 / 3
第一話 魔術レベル0
しおりを挟む俺はレイ。友達はいない。
だが寂しくはない。いつも一つ年下の妹が俺の行く先行く先へついてくるから。
俺は別に気にしていないが、端から見るともう10歳になるのに俺にばかりついてくるのは少しおかしいようだ。
俺はと言うと実は男友達が欲しかったりしないこともなくはない。
だが、そもそもここは100人もいない過疎村。
同年代の子供もいなければ、さらにあることが原因で俺には友達と呼べるような子供は1人もいなかった。
「お兄、今日は何する?」
「そうだな・・・じゃあ今日は久しぶりにバチバチにするか」
「やったー!ミリーあれ好き!」
俺が言うバチバチとは魔術のことだ。俺の魔力は本に載っていた火、水、風、土、闇、光の魔術に適していないらしかった。
だが、俺に魔力があることは知っていたから何かしら使える魔術があるのだろうと思い、試行錯誤するとバチバチー天気にちなんで雷魔術にたどり着いた。
俺はいつも通り術式を展開する。
魔力性質変換に形状変化、魔術制御、魔力制御、指向性を術式で表す。
発動コードは
「バチバチ」
手のひらで雷がバチバチと弾けるような音を立てて発生する。
規模が小さく、攻撃力の低い魔術。初級魔術くらいの威力だ。
「おおー!」
ミリーは感嘆の声を上げる。結構見ているはずなのに、リアクションがいいのはミリーの可愛いところだ。
「雷切」
術式を弄り、形を変える。
今度は手のひらを纏った感じではなく、短剣のような形にしたものだ。さっきと違い、物質化した雷だが、規模や込める魔力量から見て、これも初期魔法だ。
こうしてミリーと魔術遊びをするのはすでに日課となっている。
もともと早熟だった俺は家にあった本を全て読み漁り、一冊だけあった魔術全書という魔術のいろはが載ってあった本で魔術を勉強した。
100人もいないこの村では珍しく、俺とミリーも魔力持ちだった。
ミリーは水。本によると属性は1人1つらしい。
が、この時点で俺は矛盾していた。俺は氷と雷の魔術が使える。
魔術が使えなかった頃、ひたすら魔力を鍛えて魔力の制御能力向上と増幅をしており、かなり魔力の扱いに慣れてきたと思ったときになぜかは使い方が浮かんできた。
適正が高いと教えられなくても方法がわかるというので、俺もそうかもしれない。それはいいとしよう。1人1属性が当たり前だとしても。
そして、もう一つの矛盾を見つけてしまった。
魔術全書によれば、属性は火、水、風、土、闇、光の6種類らしい。
いや、載ってねえじゃん!
俺はこの日から魔術全書は信じていない。魔術は自分で考えて自分で身に付けている。
載ってないから見ても勉強は出来ないのだけれど。
そんなこんな。魔術に没頭してきた俺たちを奇異に思ってか、俺たちに近づこうという村人はいなかった。
そして、ボッチに至るわけだ。妹含め。
そしてある日の昼過ぎ。
今日は魔術レベル審査員がこの村に来る予定の日だ。
年に一度、魔術レベルを図る魔道具をもって審査員が各地に派遣される。
優秀な人材を見つけて、魔術学園に推薦するためだそうだ。
「では、この水晶に手を触れてください」
審査員がそう言った。
俺の双子の妹であるミリーも俺と一緒に今年審査を受ける。
ミリーが水晶に手を触れるやいなや、審査員の顔が驚愕に変わる。
「こ、こここれは!水属性の魔術レベル4!すごい…こんな村にこんな才能がいたなんて!」
さらっと村をディスられた。気にしてないからいいけど。それにしてもすごいな、ミリーは。やはり、こんな村にいたのでは比較対象が小さすぎてわからないな。
「ご、ごほん。へー、おそらく、というかほぼ確実に貴方は魔術学園に入学することになるでしょう。ご両親には私から説明させていただきますのでご安心ください」
「ええ!?私にそんな才能が…」
「ええ、将来はこの国の未来を担うような人材になられることでしょう」
それはすごいな。流石ミリーだ。
「あの~」
「あっ」
やはり忘れられていたようだ。
「すみません。ではこちらの水晶に手を触れてください」
俺は言われた通りに手を触れる。
「……全く、反応がありません。魔術の才能が無さすぎるのでしょう。妹さんに全てもっていかれたようですね」
「そんなわけないよ!お兄は凄い魔術使えるよ!」
審査員は俺を見て嘲笑うようにして言った。
この態度の変わり様にミリーも険しい顔をしている。
このクソアマ……
少し脅かしてやろうか….
「いやでも、魔術は使えるんですよねぇ」
といって大きく手を広げ、氷の粒を空中に無数に展開させる。
「なっ!?」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています


冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる