赤い世界の歌姫の噂

美しいモノには御用心

赤い世界の歌姫の噂。

赤い赤いその世界は、誰もがみることができる夢の中。

どこからか美しい歌が聴こえるね？

この世界には、どこかに歌姫がいるんだ。

美しい歌を歌う姫様だよ。

この世界に来た人は、皆歌の虜になってしまう。

皆、あまりの美しい歌にうっとりしてしまう。

だけど、美しいモノほど気をつけてね？

誰もを魅了する美しい歌。



だけど………最後まで聴いてはいけないよ？

だって………姫が来てしまうからね。

え？

こんなに美しい歌を歌う姫なんだから、きっと美しい姫なのだろうって？

むしろ会いたいって？

僕は止めないよ。

僕は注意はするけど、最後まで聴くかは本人の意思で決めてね。

どうして注意だけかって？

だって………これは君の夢だからね。



もうすぐ歌が終わってしまうね。

え？

さっきからお前は誰なんだって？

ふふ、あえて言うなら世界だよ。

だから、僕は誰の味方でもない。

だから………注意だけで、助けないし教えない。

注意はしたよ。

本当に最後まで聴くんだね？

なら、そうするといいよ。



「私の歌を聴いていたの？」

「は、はい！すごく美しい歌でした！」

「あら、嬉しいわ。なら、代価を頂戴？」

「代価？」

「そうよ。くれないの？」

「代価とはお金ですか？」

「あら、お金なんていらないわ。私の歌に値段はないの」

「では、代価はなんですか？」

「あら、わからない？アナタの………」



僕は注意したのにね。



赤い赤い世界は、夢の中。

美しい歌を歌う姫の美しい歌は、最後まで聴いてはいけないよ？

歌を最後まで聴いたら、歌姫が来てしまう。

歌姫は、代価を求めるんだ。

お金なんて求めてはいないよ。

歌姫が求めているのは、人間の魂だから。

最後まで歌を聴いてしまうと、歌姫から逃げられなくなる。

逃げるチャンスは、歌が歌い終るまで。

だけど、皆歌の虜になるから最後まで聴いてしまう。

今日も、歌を最後まで聴いた人が魂を奪われた。

奪われた魂がどうなるかって？

歌姫が美味しく食べてしまうよ。



ただの世界でしかない僕は、誰の味方でもない。

今日も歌姫は、美しい歌で獲物を呼ぶ。