魔王なんですか？とりあえずお外に出たいんですけど！

13◆アデル視点

目の前で、リオネルさんっていう魔族の人が兄ちゃんの匂いをすごく嗅いでいる。

兄ちゃんをみつめる瞳には、まるでハートマークがついているみたいに兄ちゃんに夢中だ。

兄ちゃんは………困惑している。

「放せ！嗅ぐな！変態！」

「あぅ……もっと………クンクン」

「いやーーー！！」

………むしろ、兄ちゃんすごく迷惑そうだな。

でもね、僕思うんだよ。

あんなに兄ちゃんに好意を寄せているなら、今までの兄ちゃんの彼女みたいに、兄ちゃんをフッたりしないんじゃないかな？って………。

僕だって兄ちゃんに幸せになってほしいんだ。

だけど、兄ちゃんは僕が大事過ぎてフラれてしまっていた。

………このまま、僕がジュリアナさんと結婚して…兄ちゃんもリオネルさんと結ばれたら………皆幸せになれるかな？

兄ちゃんは女性が好きだけど、リオネルさんは中性的な美人さんだ。

………女性に………みえなくもない………はず。

リオネルさんに女装してもらったら、たぶん似合うと思う。

「………ジュリアナさん、僕ね、ジュリアナさんと早く結婚したい」

「「！？」」

僕が結婚したら、兄ちゃんはやっと自由になれるんだ。

ずっと兄ちゃんと一緒にいたい。

でも、ずっと一緒にいたらずっと兄ちゃんの幸せが逃げていく。

最初は、お互いに辛いと思う。

だけど、もう僕も大人なんだから………兄離れをしないとね。

………ああ、どうしよう。

兄ちゃんと一緒にいられないのを想像すると悲しくて、目が勝手に潤んでくる。

「ねぇ、ジュリアナさん。ジュリアナさんと二人きりになりたいよ。ダメかな？」

兄ちゃんに、泣き顔なんてみせたくない。

心配をさせてしまうから、兄ちゃんを今はこの部屋から出してほしい。

リオネルさんが兄ちゃんと一緒なら、兄ちゃんに危険はないよね？

だって、あんなに好き好きアピールしているんだから。