魔王なんですか？とりあえずお外に出たいんですけど！

8◆ジュリアナ視点

たった一人の家族の兄に、アデルは会いたいと泣いている。

私は、恋のライバルじゃないなら………家族は特別に会ってもいいと思った。

私からアデルを奪わないなら、アデルの家族を歓迎しよう。

アデルの家族は、私の義家族。

アデルの兄は、私の義兄だ。

そうだ！

よく考えてみれば、家族に挨拶の一つもしないなんて………なんたる無礼なんだ！

私は自分を殴りたくなった。

………いや、殴ろう。

ズゴッ！

「！？」

私がいきなり、自分の頬を思いっきり殴ったから………アデルがビックリして固まっている。

「驚かしてすまない。義兄に挨拶するのを忘れていた私自身が許せなかったんだ」

「そ……そうですか……」

ビックリしたことで、アデルが泣き止んだのは良かったが………あまりアデルに暴力的な私なんてみせたくない。

これからは気をつけよう。

「義兄殿を連れて来るから待っていろ。………特徴と年齢と名前を教えてくれ」

義兄を知らない状態で探してもみつからないだろうと思って、義兄のあれこれを聞いた。

名前はルーチェ。

23歳のおっとりしているタイプの男らしい。

さっそく私は、義兄を探しに出かけた。

結果は、あっさりみつかった。

アデルを必死に探している………泣きそうな顔で走り回る男だ。

「家のアデルを知りませんか！？」

「弟のアデルがいない！アデルがいない！」

「アデルー！！アデルー！！」

あまりに必死で………ちょっと罪悪感が芽生えた。

余程大事にしていたんだろうな。

だが、私は義兄にアデルを返してはやれない。

私の愛する伴侶だから、罪悪感が芽生えても手放せない。

私は義兄の前に行って声をかけた。

「アデルなら知っている」

私の声に振り返ろうとしたが、私は義兄を魔法で眠らせて連れて帰った。

起きるまで、城の客室で寝かせておこう。

もしかしたら、義兄は私を殴るかもしれない。

だが、甘んじて受けよう。

義兄に挨拶をすることを忘れていたんだから、当然のことだ。