紛い物な愛でも私はそれを奪われたくない

ミクリ21

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9◆ジーク視点

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あれから、どれだけの日が過ぎたかわからない。

だって、時計とかないからね!

シルビアは俺を大事にしてくれるから、俺は毎日幸せだ。

シルビアの冷酷な姿なんて、一度もみていない。

やっぱり、冷酷なんて嘘だったんだろうな。



「ジーク」

「なんです?」

ベッドで、エッチした後のゆったりタイム。

シルビアは俺に腕枕された状態で俺をみつめた。

「私はな、ずっと感情がなかった」

「そうなんですか?」

「ああ。だが、ジークに感情をたくさん教えられて、私はやっと人間になれた気がするよ。ジークの魅了に感謝している」

「………魅了で得た感情なんて、紛い物でしょう」

「そうだな。紛い物だろうな。だが、紛い物でもいいんだ」

「………」

紛い物でもいいと笑うシルビア。

感情がないなんて、俺には想像もつかないけど……シルビアは苦労したんだろうな。

冷酷なんて陰口を言われていたんだから………。

「俺は、ずっと監禁ですか?」

「ああ。誰にも奪われないように、邪魔されないように、ずっと私だけがジークの全てになり、ジークは私の全てになる」

シルビアは俺のもので、俺はシルビアのもの。

それは、なんて甘く素敵な言葉だろうか。

「もしも、俺を奪われたらどうするんですか?」

「奪うなら、相手を拷問して一族全て根絶やしにしてやる」

「もしも、俺がここから逃げ出したら?」

「そうだな……ジークを殺して私も死のう。まぁ、ジークは逃げられないだろうがな」

シルビアの愛が重くて、そんなに愛されているんだと俺は照れてしまった。

「一般世間では、そういう思考回路の人をなんて言うか知っていますか?」

照れ隠しで、ちょっと意地悪でも言ってみようとニヤリと笑う。

「なんと言うんだ?」

「ヤンデレって言うんですよ」

「この感情が、ヤンデレという感情なんだな。また私は知ることができた」

穏やかに笑うシルビアは、誰よりも綺麗で美しい。

俺の愛する………恋人だ。







読んでくれてありがとうございました!
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