そのモブは、私の愛しい唯一無二

1◆アズエル視点

『………愛していますよ』

『うん、僕もだよ………』

愛しい彼と愛を囁き合う、そんな幸せが続くことを信じていた。



『貴方が悪いのです。私以外を愛したから………』

涙を流す彼が、僕を殺めた日の深い後悔。

同性だからと、無理に違う女性を愛そうとした僕の過ちだ。



今まで17年生きてきた僕はある日、前世の記憶を思い出した。

僕はアズエル・ミスティア。

男しかいないこの世界の学園に通っている。

前世の記憶を思い出したことで、この世界が前世でしていたBLゲームの世界であると認識するのと同時に、自分自身がモブだと理解した。

ところで、僕が思い出した前世は一つではない。

二つだ。

一つは、天界に住む天使の前世。

一つは、現代日本に生きる人間の前世。

今世のアズエル・ミスティアの記憶も合わせたら三つも記憶があることになる。

そのせいか、思い出した反動で1週間ほど寝込んでしまった。


この世界は、天使の前世を思い出したことで気づいたけど、僕と彼とあの子は名前と姿が天使だった時とほぼ同じだ。

メイン攻略対象の副会長、セス・フェリクス。

ヒロインのリズエル・トーワ。

そして、モブのアズエル・ミスティア。

僕は、思い出したことで悲しみに暮れた。

天使だった時、僕とセスは天使で、リズエルは堕天使だった。

僕とセスは唯一無二の伴侶で、リズエルはセスに一方的な恋心を持ち、僕が邪魔だったから殺した。

人間だった時は、天使だった記憶を思い出さなかった。

でも、セスはその世界でも一緒にいた。

だけど、男同士だったから………僕は違う女性を愛そうとしたんだ。

結果は、セスに僕が殺された。

そして、このBLゲームの世界で、セスは攻略対象で僕はモブ。

僕は………セスがリズエルと結ばれるのを黙ってみていることしかできないんだ。

ああ、世界は残酷だね。

僕は一人で涙を流した。