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1◆ユウタ視点

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異世界に、行ってみたいと若い頃は思っていた。

俺は月城優太だ。
今年で31歳のれっきとしたおっさんだな。
普通の会社員をしている。

皆とちょっとだけ違うのが、身長がかなり低いことと童顔なこと。

そのせいで、よく中学生と間違えられる。
………酷いときは小学生だな。

あだ名は『合法ショタ』だ。

スーツは特注品で、私服は子供服。

皆は優しいから、人にも環境にも恵まれているとは思っている。

でも………メンタルはちょっと辛い。

俺……大人だもん。
31歳だもん。

そんな俺が、何故か異世界に召喚された。


「おお神子様!貴方様の降臨を心より歓迎いたします!」

知らない美人な男が部屋に一人だけいる。

部屋……といってもいいのかわからない、何もない空間で、あるのは扉が一つだけ。

………殺風景だな。

「俺は、何故ここに?」

当たり前の疑問だと思う。

「貴方様は、神子様としてこの世界[ラーシュミア]に神子召喚で召喚され、降臨された神子様です」


男は、神官長のイーリアス・フェリクスという名前だと名乗った。

18歳らしい。

神子とは、世界に平和をもたらすために神に祈りを捧げる存在だと説明された。

前の神子が亡くなると、次の神子を召喚する。

生きているけど、何らかの理由で祈りを捧げることができなくなったら、神子が選んだ代理が代わりに祈りを捧げる。

俺は、前の神子が寿命で亡くなり召喚されたらしい。

「………悲しくはないのか?」

神子は、皆に愛される存在らしい。

愛されていたなら、悲しくてたまらないんじゃないのか?

次の神子が必要でも、それで心は辛くはないのか?

俺は、この世界の人じゃないから、聞かないとわからない。

「アウラ様が亡くなり、皆悲しくて辛くてたまらないですよ。でも、だからこそ次の神子様がすぐに必要なのです。この世界は、悲しみや怒り、恨みや妬み、不安や殺意……マイナスの感情は魔物を生みます。世界が悲しみに涙を流し続ければ、それだけ魔物が生まれます。少しならすぐに倒せますが、大量に…それも強力な魔物が生まれたならば世界は恐怖に染まり、余計に魔物が生まれます。平和のためには、神子様が必要なのです」

前の神子の名前は、アウラ・ミクリアというらしい。

97歳だったそうだ。

イーリアスの表情は、微笑んでいるけど………悲しいのを堪えているからか瞳が潤ってみえる。

涙を堪えているんだ。

「泣いたらダメなのか?」

「いいえ、泣いてもいいのです。無理は良くないですからね。神子様がいなければ、無理に我慢しないといけませんでした。神子様がいるから、我慢せずに泣くことができます」

神子が祈りを捧げることが、皆の心を癒し世界の平和を守る。

最初は皆の悲しみを癒すことからで、それはどの神子も経験することらしい。

「イーリアスさんは泣かないのか?」

「イーリアスでいいですよ。ここでですか?………いいんですか?」

俺は、イーリアスを抱きしめて頭を撫でた。

身長が低い俺のために、ずっと座って話していたイーリアスは少し驚いていたけど………すぐに俺にしがみついて泣き出した。

イーリアスが満足するまで、泣かせてやろう。

その後で、神子として祈りを捧げるから今は父親にでもなった気分でイーリアスの頭と背中を撫で続けた。
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