魔王の生まれ変わりは元勇者と親子になる！

3◆エルビス視点

突然、知らない子供がお兄ちゃんと言いながら走って来て抱きついた。
………そして、豪快に泣き始めた。

驚いたが、とりあえず抱きしめて背中を撫でてみたら落ち着くかなと泣き止むまで撫でていた。

お兄ちゃんと言われたが、俺は現在38歳だからちょっと複雑だ。

泣き止んだ子供に、お茶でもと思って自宅に招く。

……正直、子供が喜ぶようなお菓子やジュースはないから、お茶だけで我慢してもらおう。
お菓子じゃなくてもいいなら食料はあるが、お腹は空いているだろうか？


さて、子供の名前はラウロというらしいが…名前以外はわからないようだ。

記憶喪失か………困ったな。

とりあえず、連絡用の魔導具で城に勤めている元仲間に迷子の子供を保護したと伝えた。

これで保護者がみつかればいいが………。

ラウロはまだ5歳ぐらいにみえるが、年齢もわからないらしい。

それにしても、この子はどことなく魔王に顔が似ている。

彼を幼くしたみたいな……そういえば、魔王の名前は知らなかったな。
どんな名前だったのか………。


しばらく保護者がみつかるまで、ラウロは俺が育てることにした。

ラウロもなんだか、俺をお兄ちゃん！お兄ちゃん！となついている。

俺と一緒に生活する話をしたら、一瞬キョトンとして笑顔を輝かせて、

ラウロ「じゃあ、お兄ちゃんじゃなくてパパだね！」

と、言われて抱きしめてきた。

そして、嬉しそうにパパ！パパ！と甘えてくる。

保護者がみつかれば、その後はわからない。

だが、それまで愛情をたくさん注いで育てよう。

神様、俺はずっと罪滅ぼしがしたかった。

魔王を殺した罪滅ぼしを。

過ちは消えないが、この子が笑うと心が少し軽くなる。

魔王に少し似ているこの子には、ちゃんと幸せになってほしい。