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1◆エルビス視点

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俺は勇者のエルビス・クラインだ。

……今は、元勇者だがな。

少し前に、俺は勇者として仲間と魔王討伐の旅をしていた。

魔王の噂は悪い話ばかりで、悪い魔王を倒して世界に平和を!と、仲間と魔王の住む城に向かった。

そこで、俺たちは魔王と呼ばれる彼の現状を知った。

広くて大きい城は、いろんなところが壊れていたり分厚いほこりをかぶっていた。

まるで、誰もいないみたいだった。

唯一きれいだったのは、魔王がいる部屋だけだった。

………魔王以外、誰もいない魔王城で、彼はぼろぼろのぬいぐるみを大事そうに抱きしめてベッドに座っていた。

着ている服は、まるでスラムに住む人みたいな少し汚れたぼろぼろの服。

髪は切ってないのか伸び放題だ。

………皆が噂する魔王とはかけはなれていた。

しかし、確かに彼は魔王だった。
その強すぎる魔力は、疑う意味がない程だ。

俺たちは動揺しながらも戦闘態勢をとったが、彼は俺たちに言った。

魔王「俺を殺しに来たか……。人間は本当に救いようがないな。殺したいなら好きにしろ。ただし、忘れるな。俺は人間を許さない。俺は人間を恨みながら、貴様たちに殺されてやる」

無抵抗のまま、目を閉じた彼。

………彼を殺すことが、本当に正しいのか………俺は迷ってしまった。

しかし、魔王を倒せるのは勇者だけだから、俺は…………彼を、殺した。


だが、彼が死ぬことが間違いだったとすぐにわかった。

彼が死んでも、世界は何も変わらない。

魔王が悪だと言われていたのは、全てが被害妄想だった。

俺も仲間も深く絶望した。

魔王の現状をみたのに、魔王の最後の言葉を聞いたのに、結局殺してしまった。

なにが勇者だ!

俺たちは何度も懺悔を繰り返した。

そして願った。

あの魔王が、今度は幸せになれる人生を歩めるようにと………。

俺は、魔王討伐の功績で国王に望みのものをやると言われた。

もう人と関わりたくなくて、深い森に住居をもらった。

俺は、死ぬまで彼を殺したことを懺悔して生きる。

死ぬ瞬間まで、彼を忘れない。
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