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12◆アイリス視点
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「アイリス様、お話があります」
「………そうだね」
僕とセルジュは、ベッドでお互いに正座して向かい合っている。
僕は、あの時の幻覚でキールの姿をみたけど………セルジュは何をみたのかが気になっているんだ。
セルジュが何を気にしているかはわからないけど、セルジュはセルジュで聞きたいことがあるらしい。
「その………森に行った時、何かみませんでしたか?」
「………」
伝えても、意味なんてきっとない。
けれど、貴方の偽物に会ったせいか伝えたくなってしまった。
「僕ね、前世の記憶があるんだよ。愛する人がいたんだ。愛する人は、僕を魔物から庇い死んだ。けれど、僕もすぐに魔物に殺されて死んだ。………僕は、愛する人の幻覚をみたよ」
愛する人が君の前世だとは言わない。
信じてもらえないと思ったから………。
「アイリス様………俺にも、前世の記憶がありますよ。………あの後、生き残れなかったんですね」
「!!」
辛そうに歪む表情に、僕は驚いた。
え……?
セルジュも前世の記憶があるの!?
「キール………?」
「俺の愛するラース」
あぁ……あぁ……君が僕の名前を呼んだ。
貴方の呼び慣れた僕の名前を呼んだ!
「キール!!」
僕は、君をベッドに押し倒した。
瞳から、僕からは出ないと思っていた涙が溢れ出す。
今まで出なかったせいか、涙が止まりそうにない。
「僕……セルジュにはキールの記憶はないと思っていた」
「俺も、アイリス様にはラースの記憶がないと思っていました」
そっか………貴方の記憶は、ずっとあったんだね。
愛しい愛しい僕のキール。
「ふふ、僕達勘違いしていたんだね」
「そうみたいですね」
僕を抱き締めつつも、セルジュは僕の頭を優しく撫でてくれた。
………貴方に伸ばした手は、やっと貴方に届いた。
「………そうだね」
僕とセルジュは、ベッドでお互いに正座して向かい合っている。
僕は、あの時の幻覚でキールの姿をみたけど………セルジュは何をみたのかが気になっているんだ。
セルジュが何を気にしているかはわからないけど、セルジュはセルジュで聞きたいことがあるらしい。
「その………森に行った時、何かみませんでしたか?」
「………」
伝えても、意味なんてきっとない。
けれど、貴方の偽物に会ったせいか伝えたくなってしまった。
「僕ね、前世の記憶があるんだよ。愛する人がいたんだ。愛する人は、僕を魔物から庇い死んだ。けれど、僕もすぐに魔物に殺されて死んだ。………僕は、愛する人の幻覚をみたよ」
愛する人が君の前世だとは言わない。
信じてもらえないと思ったから………。
「アイリス様………俺にも、前世の記憶がありますよ。………あの後、生き残れなかったんですね」
「!!」
辛そうに歪む表情に、僕は驚いた。
え……?
セルジュも前世の記憶があるの!?
「キール………?」
「俺の愛するラース」
あぁ……あぁ……君が僕の名前を呼んだ。
貴方の呼び慣れた僕の名前を呼んだ!
「キール!!」
僕は、君をベッドに押し倒した。
瞳から、僕からは出ないと思っていた涙が溢れ出す。
今まで出なかったせいか、涙が止まりそうにない。
「僕……セルジュにはキールの記憶はないと思っていた」
「俺も、アイリス様にはラースの記憶がないと思っていました」
そっか………貴方の記憶は、ずっとあったんだね。
愛しい愛しい僕のキール。
「ふふ、僕達勘違いしていたんだね」
「そうみたいですね」
僕を抱き締めつつも、セルジュは僕の頭を優しく撫でてくれた。
………貴方に伸ばした手は、やっと貴方に届いた。
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