兎の国の王子と狼の国の王女〜兎が狼を追いかけてもいいじゃないか！〜

5◆モーリス視点

ラビットから、マルチェスがラピスに会いにやって来た。

………噛み殺していいよね？

ラピスは、プレゼントのマカロンに喜んでいる。

そして、俺を無視してマルチェスと部屋に行ってしまった。

マカロンぐらいお兄ちゃんがいっぱい買ってあげるぞ！

そんな兎野郎のマカロンなんか、使用人にでも食わせればいいんだ！

捨てるという発想はしない。

マカロンに罪はないからな。

悪いのはマルチェスだ。

俺は当たり前のようにラピスの部屋までついていき、当たり前のようにラピスの部屋に入った。

………いや、入ろうとした。

しかし、愛するラピスに妨害されて入室できなかった。

ガーン！(ショック)

「モーリス兄上、マルチェスに唸ったのを謝罪しないならマカロンは差し上げませんからね」

俺をみつめるラピスは、俺がマカロン欲しさに部屋に入ろうとしていると勘違いしているようだ。

「そんな奴が持ってきたマカロンなんかいらない。お兄ちゃんは、ラピスを危険な兎野郎から守るという使命があるんだ！」

伝われ俺の熱いラピスへの愛！

ラピスが襲われたりなんかしたら、俺は殺人だってしてやるつもりだ。

しかし………。

「そんな使命はありません。謝罪しないなら、部屋には入れませんからね」

バタン。

無情にも扉はラピスの手によって閉められてしまった。

ガチャン。

なっ！？

扉から、鍵を閉める音までした。

「ラピス！何も鍵まで閉めなくていいだろう！？」

バンバンと扉を叩いたが、ラピスからは返事をしてもらえない。

お兄ちゃん、本気で泣いちゃうぞ！！

キューンキューン。

悲しげに狼耳も尻尾も垂れ下がり、俺は扉の前に体操座りでラピスが出てくるのを待った。