盗賊頭は勇者を口説いて、勇者は魔王を口説いた

ミクリ21

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魔王は苦労性

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盗賊頭マリナンは、勇者アリシアが好きだ。

しかし、アリシアは魔王ヨルンのことが好きだ。

そんな三人の口説き口説かれの話。



「アリシア。ヨルンなんてつまらない男やめて、俺にしておけよ。俺ならお前を楽しませてやれるぜ」

マリナンは、アリシアの肩を抱くとその耳元に甘く囁いた。

マリナンは、ワイルドなタイプのイケメンだ。

しかし、アリシアはそんなマリナンの手を払い退けると、蔑むような眼差しを向けて舌打ちをした。

「止めてくれます?あんさんのような男、趣味じゃないんですわ。汚らわしい手で私に触れないでほしいものですわぁ」

アリシアは、住んでいた地域の言葉がとても愛嬌のある美青年だ。

ハキハキと自分の気持ちを喋る素直なタイプで、はっきりとマリナンのことを冷たく睨む。

愛情の欠片もない眼差しだが、その眼差しがマリナンに好かれる原因でもあった。

マリナンは実はドMなのだ。

しかし、アリシアはそのことに気づいていない。

そして、アリシアは隣に座るヨルンにしな垂れた。

ちなみに、ヨルンは優美なタイプのイケメンだ。

「ヨルン、野蛮な男がしつこいわぁ!私とヨルンの逢瀬を邪魔するいけ好かない男は、馬に蹴られてしまえばいいんですわぁ!」

「………アリシア、お前が勝手に居座っているだけで、これは逢瀬ではない」

「ヨルンったら!恥ずかしがって、可愛いわぁ!愛しとります!」

アリシアはヨルンの部屋に居座り、一方的に言い寄っている。

そんなアリシアを追いかけて、マリナンもヨルンの部屋に居座っている。



マリナンとアリシアの出会いは、盗賊頭退治の時だった。

「あんさんですな?悪さばっかしてるお人は。みるからに野蛮そうな小汚い男やわぁ!」

マリナンは、アリシアの蔑む眼差しと蔑む言葉に運命を感じた。

一度アリシアに倒されてからというもの、アリシアをストーカーしてどこまでも追い続けて、魔王城まで追いかけてきた。



アリシアとヨルンの出会いは、魔王討伐のために魔王城に乗り込んだ時だ。

「よく来たな勇者よ」

「好きですわぁ!結婚してぇ!」

「………勇者よ、何しに来たのだ?」

ヨルンに惚れたアリシアは、それからずっとヨルンを口説いている。

………魔王城に居座って。

アリシアを追いかけてきたマリナンも、アリシアを口説いている。

………魔王城に居座って。

「………お前達、帰ってくれないか?いつまでいる気だ」

「ヨルンが私の男になるまでに決まっとります」

「アリシアが俺のモノになるまでに決まっているだろ?」

「………はぁ」



魔王ヨルンの苦労は、たぶん終わらない。



チャンチャン♪

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