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夏休み

75◆真紅視点

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昼食後。

ゆっくりと休むついでに、梓さんを呼んだ理由の『話したいこと』を話すことになった。

「梓君、生徒会に入りませんか?梓君は成績優秀ですから、是非とも欲しい人材なのです」

「お断りします」

にこやかに話す由良さんに対して、梓さんは即答でお断りの返事をしていた。

ずいぶんすっぱりと返事をしたな………。

「生徒会嫌ですか?」

「嫌ですね」

「私達のこと嫌いですか?」

「嫌いではないけれど、そういう話じゃない」

由良さんにここまで堂々と自分の意見を言うとは、梓さんは大物になる予感がする。

「そうですか。残念ですけど、仕方ないですね。気が変わったらいつでも言ってください。私達はいつでも梓君を受け入れますからね」

………それにしても。

本来なら巴さんが話すべき内容だろうけれど、由良さんが話しているあたり、やはり由良さんはお母さんなのだろうと思う。

本人に言ったら、怒られるから口が裂けても言えないけれど………。



「せっかくだから、今夜あたり怪談話でもしようよ!きっと盛り上がるよ!夏といえばやっぱり怪談だよね!」

カイリさんがそうやってわざわざ挙手して意見してきたけれど、それに対して梓さんは何故かぶるりと震えている。

「俺、先日心霊体験したんだよな」

「どんな体験?教えて教えて!」

梓さんは嫌がったけれど、カイリさんがしつこく聞いたから、最終的に折れた梓さんが先日に体験した話をしてくれた。

お化け屋敷とは、また出やすい場所で体験したものだ。

その気になったら、気づかないパターンもある場所じゃないか。

幽霊も考えたものだ。

「はぁはぁ……ゾクゾクして気持ちいい。脱ぐね」

「脱ぐな!?」

カイリさんは突然服を脱ぎだした。

この人が突然服を脱ぐのは、本当にいつものことだ。

さらにいうなら、服を脱ぐということに直結しないはずの理由でも、服を脱ぐ理由にする。

………とんでもない変態だ。

「カイリ、まさか服を脱ぐ理由にするために、怪談話しようなんて言い出したんじゃないよな?」

「ま…まっさか~!………てへ(ハート)」

巴さんが、まさかと思ったことをカイリさんに聞いてみた。

すると、どうもそのまさかだったようだ。

誤魔化そうとしたけれど……誤魔化せないと思ったのか、あざとく首をコテンと傾げて、カイリさんは愛嬌を振りまいた。



ちなみに、俺と満さんは黙々とお茶をすすりながらお茶菓子の大福を食べていた。
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