上 下
76 / 94
夏休み

73◆巴視点

しおりを挟む
湖の水は、少しひんやりしていて気持ちがいい。

俺は腰まで水の中に入り、気持ち良さにうっとりしていた。

夏の暑さはキツいが、こうして水浴びをできるのは純粋に楽しいよな。

「巴さん」

「梓、どうした?」

「………落とし物どうぞ」

「え!?」

呆れた眼差しの梓に手渡されたのは、俺の水着だった。

俺の特徴的なブーメランな水着!

どうして梓が持っているんだと思って、俺は自分の下半身を見たら………俺の水着がなかった。

「な…なんで………!!」

「移動中に、だんだん脱げていっていましたよ。それは見事にスルスルと脱げていっていましたよ。そんでもって、水面に脱げた水着が浮いちゃってましたよ」

なんてことだ!

梓の『脱げないといいですね』という言葉がフラグだったなんて!!

俺は恥ずかしい気持ちを抑えて、急いで水着を穿いた。

「気をつけないと、いつかフルチン大王って言われますよ」

「言われねぇよ!!」

俺は、好き好んでフルチンになったわけじゃないんだよ!

俺はイラッときて、こうなったら梓の水着も脱がしてやる!と梓に襲いかかった。

「いきなり何をするんですか!?」

「梓、フルチンを笑う者はフルチンに泣くんだよ」

「何言ってるんですか!?」

梓の水着を脱がそうとする俺と、それを阻止しようとしている梓。

そんな俺達の激しい攻防に気づいた由良は、止めに入ってきた。

「やめなさい!仲良くしなさい!巴、梓君に嫌われたいんですか?」

「ぐっ!それは………っ!」

梓に嫌われたいのかと由良に聞かれ、俺は咄嗟に梓の水着から手を離した。

………梓に嫌われたくないからだ。

クソッ!

これが惚れた弱みというものなのか!

これでは、仕返ししたいのに仕返しできないじゃないか!



「梓君、巴がすみません」

「いえ、大丈夫です」

あぁ………。

なんか、目の前で梓の由良への好感度が上がったような気がする。

めちゃくちゃ悔しいぜ!ムキィ!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

いつでも僕の帰る場所

BL / 連載中 24h.ポイント:9,693pt お気に入り:1,163

平凡サキュバス、ハイスペイケメンに愛される。

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:37

暁の騎士と宵闇の賢者

BL / 連載中 24h.ポイント:6,746pt お気に入り:834

親切な王子様は僕のおともだち。

BL / 完結 24h.ポイント:378pt お気に入り:1,544

タッタラ子爵家の奇妙な結婚事情

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:28

きっと明日も君の隣で

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:184

(完結)好きな人には好きな人がいる

BL / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:833

待って!悪役令息だよ?

BL / 完結 24h.ポイント:355pt お気に入り:242

処理中です...