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夏休み

68◆梓視点

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夜。

とある肝試しスポットとして有名なお化け屋敷に、俺達は入場料を払って肝試しをすることになった。

そのお化け屋敷は、ちょっとしたデートスポットでもある。

だから、肝試しのつもりで来ている人達もいるが、デートのつもりで来ているカップル達もいる。



俺達は最初の話し合いの時、ペアを組むつもりでいた。

けれど、咲夜がそれでは僕がイチャイチャを見れないじゃないか!と抗議したために、四人で行くことになった。

ちなみに………。

そのお化け屋敷では、写真もしくは動画などの撮影はお断りしていますということで、咲夜はやむ無くスマホをポケットにしまっていた。

「家に帰ったら、このイベントを同人誌にしてやる!」

咲夜は同人誌……所謂薄い本を作る人で、確実に同人誌のネタにするつもりでいるようだ。

おそらくだが、エロを盛り込んでくるような気がして恐ろしくてならない。



お化け屋敷での肝試しが終わり、俺達はホテルで各々感想を言うことにした。

「皆のメンタル強すぎだよ!メンタル鋼なの!?もうちょっと怖がってよ!特に梓、もっと怖がって純也と杏にくっついて、キャーキャーイチャイチャしてよ!もっと僕に萌えを提供して!」

「咲夜………」

肝試しをした結果。

四人共が、全く何に対しても怖がらなかった。

驚かせるためのお化け役の人にも何も反応せず、むしろそのお化け役の人の方が可哀想なぐらい落ち込んでいた。

驚かせるのが仕事なのに、全く驚かないからやるせなかったのだろう。

俺が怖がって純也と杏に抱きつくとか、そういったことを期待していた咲夜は、とても不満だったようだ。

そんなことを言われても、怖くなかったものは仕方ない。

「肝試しなんだし、肝は試せたんだからいいんじゃないかな?」

杏が咲夜を落ち着けようと、苦笑している。

「お化け屋敷なんて、あんなものでしょう」

純也は眼鏡をクイッと上に押し上げつつ、冷静にそう言った。

「そうだよな!それにしても、あんまり怖くないお化けばっかりだったな。でも、どうして夜なのに子役までいっぱいいたんだろうな?仕事とはいえ、あの子達も大変だね」

「「「え?」」」

「ん?」

何故か俺の言葉を聞いた三人は、固まってしまった。

その表情は、心なしか青いような気がする。

どうしたんだろう?

「梓、子役って?」

「?いっぱいいたじゃないか。お化け役の子役が……。大人だけならまだ分かるけれど、子役は昼間だけにした方が親御さんも安心なんじゃないかな?でも、仕事だから仕方ないのかな?本当に大変だよな」

「「「………」」」

「どうした?」

より一層表情を青くした三人。

「梓、子役は……いなかったよ。大人だけだったよ。本当に……子役、いたの?」

「え……いたよ。え……?いただろ?」

三人が首を横に振る。

………嘘だろ?

え……じゃあ、あれは?

俺が見た子役たちは………。



ギャァーーー!!

俺の悲鳴が、ホテルの室内に響き渡るのだった。
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