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1学期

48◆更紗視点

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「………すごかったですね」

「本当にな………」

竜城君の部屋にまだいる僕は、竜城君と苦笑いをした。

本当に……天波君すごかった………。

荒ぶる猛獣みたいだった………。

青山君が天波君の頭を殴って気絶させた後、竜城君は天波君のヨダレでベトベトになった服を着替えていた。

「ところで、スマホ……いつもあんな感じなんですか?」

今は電源が切られている竜城君のスマホは、切るまでずっと鳴り続けていた。

ちょっとしたホラーだとは思ったけど、失礼だろうからそれは言わない。

「実は……俺がこの学園に通うことにしたのは、兄ちゃんにブラコンを卒業してほしいからなんだ。このままじゃ兄ちゃん、誰もお嫁に来てくれないから………」

「そ…そうですか………」

シュンとしている竜城君の頭を、とりあえず撫で撫でしておこう。

「桜崎、ありがとう」

少し元気になった竜城君は、優しく微笑んだ。
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