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1学期

35◆梓視点

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会長さんに、何故か手料理を振る舞うことになった俺だよ。

会長さん………いや、暁さんはお願いチケットを俺に対して使ったんだ。

というか、名前で呼べって言われたよ。

嫌だと言ったら、名字呼びで妥協してくれた。

………妥協…なのかな?

「竜城、俺に手料理を振る舞え。材料費はこっちで出す」

「え、嫌です」

「即答!?ゴホン、お願いチケットを使うから断れないぞ。いや、拒否権は一応あるが、手料理は拒否権使える程の無理難題じゃないだろ。それとも、竜城の手料理はポイズンクッキングなのか?」

「レベルの低い挑発ですね」

実はお願いチケットとは、物を貰う以外にも無理難題じゃない内容なら、他者にお願いを聞いてもらうこともできるんだ。

そして、手料理を作るのは無理難題とは言えない。

材料費は向こうが出すなら、尚更拒否できない。

ということで、俺は渋々手料理を作ることになったのだった。



何を作ってもいいと言われたので、とりあえずドリアを作った。

俺がドリアの気分だったからね!

「意外に料理上手なんだな」

すごく意外そうにしているけど、ちょっと失礼じゃないかな?

「兄ちゃんが作っているところをよくみていましたからね」

兄ちゃんは、いつも俺に手料理を作っていたからね!

「作り慣れているのか?」

「俺は初めて作りました」

「………え?」

実は、俺は料理初心者というか………おにぎりとかサンドイッチなら作ったことあるよ。(子供時代)

火や包丁を使う料理はこれが初めてだ。

兄ちゃんが、俺が怪我をするのを恐れてさせてくれなかったんだよ………。

完成したドリアは、初めてにしては上出来だと思う。

レシピはたぶん間違っていない。………はずだ。

ちなみに、コンソメスープとサラダも用意している。

「これで初めてなのか………?いただきます」

何故か驚いている暁さんを気にせずに、パクりと頬張ると久々の兄ちゃんのドリアの味がした。

美味しい!

暁さんの口にも合ったらしく、終始ずっと驚いていた。

兄ちゃんのドリアの味にハマったのかな?

なんなら、レシピをメモして渡そうかな?

でも、食堂のドリアも美味しいよ!

いろんなことを考えていると暁さんがボソッと………。

「どうしよう………文句の付け所がない………」

と言っていた。

………素直に美味しいって言えばいいと思うよ。
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