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一体なんの冗談だ
一体なんの冗談だ05
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「利用なんて……後が怖い」
「見返り?」
否定もできずに口ごもる。
客が来て助かった。
仕事が終わり、前回の礼で羽入兄弟を帰し、拓と一緒に掃除を済ませる。
「拓って綺麗好き?」
「大概は。なんで?」
「めっちゃ綺麗だから」
ドアノブをせっせと磨いていた拓はニッと笑った。
「良い妻になりそう?」
「なりたいのかよ」
「忍のならオレは妻でもいい」
笑い声が響く。
ブラシを片付け、洗面台を丁寧に拭う。
それから二人で鏡を見つめた。
「拓ってなんで茶髪にしたの?」
「あー。美味しそうだから」
「は?」
指先で房を摘まむ。
「たけのこヘアー」
「え……くっはははは! なにいきなりボケてんの」
「大真面目ですしぃ」
誤魔化すようにばしゃっと顔を洗う。
俺は微妙にツボに入って肩を震わせていた。
ポチャン。
顎から滴を垂らしながら顔を上げた拓に笑いが止まる。
濡れた前髪が一気に印象を変える。
いつもより眼光が鋭く見える。
「……どしたの?」
見入ってしまっていた。
「いや。拓ってストパかけたら恰好良さそうかなって」
口を曲げて前髪をわしゃわしゃと掻く。
「んー。サラサラね……忍より似合う男にはなれねーし」
「確かに」
黒のタンクトップに、流れる黒髪。
後姿だけでは声をかけたくなる女性にさえ見える。
事実、何度も男にナンパされたとぶち切れながらよく話していた。
「不安じゃないの」
「浮気?」
「まあ、それ」
ハンカチで顔を拭いた拓は、身を反転させて流しにもたれかかった。
「そりゃね、忍に首輪つけて閉じ込められるんならそれほど安心なことはねーよ。でも、あいつを独占しっ放しってのもどうなんだって最近考えんの」
本当に好きなんだな。
俺は圧倒されている気分で耳を傾ける。
「それに忍は、簡単に触れさせるような男じゃない」
低い声が空気を割るように告げた。
背中に電気が走る数瞬の沈黙。
「なんて、ね。あいつ弱いから押し倒されたら終わりだけど」
「……なんだよっ。一瞬格好いいって思ったのに」
「ははっ。瑞希も気をつけろ~」
「洒落じゃないって、ソレ」
「見返り?」
否定もできずに口ごもる。
客が来て助かった。
仕事が終わり、前回の礼で羽入兄弟を帰し、拓と一緒に掃除を済ませる。
「拓って綺麗好き?」
「大概は。なんで?」
「めっちゃ綺麗だから」
ドアノブをせっせと磨いていた拓はニッと笑った。
「良い妻になりそう?」
「なりたいのかよ」
「忍のならオレは妻でもいい」
笑い声が響く。
ブラシを片付け、洗面台を丁寧に拭う。
それから二人で鏡を見つめた。
「拓ってなんで茶髪にしたの?」
「あー。美味しそうだから」
「は?」
指先で房を摘まむ。
「たけのこヘアー」
「え……くっはははは! なにいきなりボケてんの」
「大真面目ですしぃ」
誤魔化すようにばしゃっと顔を洗う。
俺は微妙にツボに入って肩を震わせていた。
ポチャン。
顎から滴を垂らしながら顔を上げた拓に笑いが止まる。
濡れた前髪が一気に印象を変える。
いつもより眼光が鋭く見える。
「……どしたの?」
見入ってしまっていた。
「いや。拓ってストパかけたら恰好良さそうかなって」
口を曲げて前髪をわしゃわしゃと掻く。
「んー。サラサラね……忍より似合う男にはなれねーし」
「確かに」
黒のタンクトップに、流れる黒髪。
後姿だけでは声をかけたくなる女性にさえ見える。
事実、何度も男にナンパされたとぶち切れながらよく話していた。
「不安じゃないの」
「浮気?」
「まあ、それ」
ハンカチで顔を拭いた拓は、身を反転させて流しにもたれかかった。
「そりゃね、忍に首輪つけて閉じ込められるんならそれほど安心なことはねーよ。でも、あいつを独占しっ放しってのもどうなんだって最近考えんの」
本当に好きなんだな。
俺は圧倒されている気分で耳を傾ける。
「それに忍は、簡単に触れさせるような男じゃない」
低い声が空気を割るように告げた。
背中に電気が走る数瞬の沈黙。
「なんて、ね。あいつ弱いから押し倒されたら終わりだけど」
「……なんだよっ。一瞬格好いいって思ったのに」
「ははっ。瑞希も気をつけろ~」
「洒落じゃないって、ソレ」
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