101 / 137
どちらかなんて選べない
どちらかなんて選べない12
しおりを挟む
悩みながら眠ると安眠は滅多にない。
四時に目を覚ました俺は、携帯のランプに気づいた。
メール。
河南からだ。
眼を擦り、身を起こす。
件名に目が留まる。
『だいすき』
なんだろう。
うれしいとか、どうしたんだ急にとかよりも、胸が締め付けられる。
緊張しながら開く。
『今度、シエラにお客さんとして行くね。がんばって』
可愛い絵文字。
なんだろう。
どうして一字一字が引っ掛かる。
まだ薄暗い室内をそっと歩いてシャワーを浴びようと洗面所に向かう。
ガチャリと開けて叫びそうになった。
「ごっ、ごめんなさい!」
急いで扉を閉める。
類沢がタオルを背中に掛けて、濡れたまま立っていたから。
何も纏わずに。
出てきたばかりだからか、白く湯気が漂う。
長い黒髪から滴が垂れる。
一瞬でも強烈に焼き付く整った体。
ソファに飛び乗りクッションを抱えて顔を埋める。
筋肉の陰影と、浮き出た肩甲骨。
口元を拭う仕草がなんであんなに綺麗なんだ。
「ああっ。思い出してどうする!」
顔を振って残像を消す。
あの夜まで呼び起こしてしまう。
というよりもあの人は何時に起きたんだ。
寝てなかったとか。
考えても仕方ないことばかり浮かんでは消える。
とりあえず頭をスッキリさせようと、さんぴん茶を一つ取る。
「僕にも頂戴」
落としてしまった。
ソファに並んで座る。
類沢は上半身はタオルのみ。
それを意識してしまう自分に自己嫌悪が止まらない。
喉を鳴らして飲む音だけが響く。
俺はちょびちょびとしか通らない。
先に飲み干した類沢がペットボトルを指先で緩く回す。
「あの昨日は本当に……本当に」
「いいよ、もう」
言葉が続かない。
必死で頭を回転させていると、頭をなでられ、そのままぐいっと引かれた。
胸元の熱にかあっと熱くなる。
「それとも、お仕置きされたい?」
見上げてはいけない。
きっと呑まれる。
それでも俺は、顔を上げた。
四時に目を覚ました俺は、携帯のランプに気づいた。
メール。
河南からだ。
眼を擦り、身を起こす。
件名に目が留まる。
『だいすき』
なんだろう。
うれしいとか、どうしたんだ急にとかよりも、胸が締め付けられる。
緊張しながら開く。
『今度、シエラにお客さんとして行くね。がんばって』
可愛い絵文字。
なんだろう。
どうして一字一字が引っ掛かる。
まだ薄暗い室内をそっと歩いてシャワーを浴びようと洗面所に向かう。
ガチャリと開けて叫びそうになった。
「ごっ、ごめんなさい!」
急いで扉を閉める。
類沢がタオルを背中に掛けて、濡れたまま立っていたから。
何も纏わずに。
出てきたばかりだからか、白く湯気が漂う。
長い黒髪から滴が垂れる。
一瞬でも強烈に焼き付く整った体。
ソファに飛び乗りクッションを抱えて顔を埋める。
筋肉の陰影と、浮き出た肩甲骨。
口元を拭う仕草がなんであんなに綺麗なんだ。
「ああっ。思い出してどうする!」
顔を振って残像を消す。
あの夜まで呼び起こしてしまう。
というよりもあの人は何時に起きたんだ。
寝てなかったとか。
考えても仕方ないことばかり浮かんでは消える。
とりあえず頭をスッキリさせようと、さんぴん茶を一つ取る。
「僕にも頂戴」
落としてしまった。
ソファに並んで座る。
類沢は上半身はタオルのみ。
それを意識してしまう自分に自己嫌悪が止まらない。
喉を鳴らして飲む音だけが響く。
俺はちょびちょびとしか通らない。
先に飲み干した類沢がペットボトルを指先で緩く回す。
「あの昨日は本当に……本当に」
「いいよ、もう」
言葉が続かない。
必死で頭を回転させていると、頭をなでられ、そのままぐいっと引かれた。
胸元の熱にかあっと熱くなる。
「それとも、お仕置きされたい?」
見上げてはいけない。
きっと呑まれる。
それでも俺は、顔を上げた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる