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どちらかなんて選べない
どちらかなんて選べない11
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ここ数日は本当にいろいろあった。
色々ありすぎた。
俺はすっかり対処を忘れていた。
「え、えと……?」
カタンと引き出しが閉まる。
ブレスが揺れる手の中には手紙が一通。
視線がそこに止まり、追いかける。
端を唇につけて、類沢がじっと見つめる。
蛍光灯と月光が混ざり合う。
「ああと……はい、いえ。その、開けました」
「そう」
にこりと笑って類沢は近づいてくる。
バクバクと心臓が早打つ。
「じゃあ、次の質問。なんで開けたの?」
笑顔なのに。
誰もが羨む笑顔なのに。
俺はあとずさりしてしまった。
ドンと壁に背中がつく。
一歩手前で軽く首を傾ける類沢の圧に腰が抜けそうになる。
「ま、好奇心かな」
一気に声が低くなる。
俺は頷くことすらままならなかった。
なにが悪いのかもよくわからないままに。
その手紙の中身も知らないから。
「すみません……」
蚊の鳴く声とはこのこと。
俺は情けなくなりながらも、言い訳も出てこない。
そこで類沢がふいと後ろを向いて、ベッドに腰掛けた。
髪を解いて傍らの机に手紙を置く。
「ちょっとがっかり。触れてほしくなかったから」
息を吐きながら横になる。
それだけの動作で感情が身を震わせる。
俺は口を開きかけて、そっと体育座りをする。
冷たい床が責め立ててくる。
穏便な人が怒ると怖いとかよく言うけれど、怒りを見せない方が恐怖は強い。
結局数分してリビングに出て行った。
もし酔っていなかったら、笑って済ませてくれたんだろうか。
もしくは、怒りを見せてくれただろうか。
見放されたような虚しさに、俺は悪寒がした。
ソファに座り、月明かりを眺める。
類沢がいつも心の奥底で思っていることを垣間見た気がするが、それは望んでいたタイミングじゃなかった。
朝が来るのが少し怖かった。
色々ありすぎた。
俺はすっかり対処を忘れていた。
「え、えと……?」
カタンと引き出しが閉まる。
ブレスが揺れる手の中には手紙が一通。
視線がそこに止まり、追いかける。
端を唇につけて、類沢がじっと見つめる。
蛍光灯と月光が混ざり合う。
「ああと……はい、いえ。その、開けました」
「そう」
にこりと笑って類沢は近づいてくる。
バクバクと心臓が早打つ。
「じゃあ、次の質問。なんで開けたの?」
笑顔なのに。
誰もが羨む笑顔なのに。
俺はあとずさりしてしまった。
ドンと壁に背中がつく。
一歩手前で軽く首を傾ける類沢の圧に腰が抜けそうになる。
「ま、好奇心かな」
一気に声が低くなる。
俺は頷くことすらままならなかった。
なにが悪いのかもよくわからないままに。
その手紙の中身も知らないから。
「すみません……」
蚊の鳴く声とはこのこと。
俺は情けなくなりながらも、言い訳も出てこない。
そこで類沢がふいと後ろを向いて、ベッドに腰掛けた。
髪を解いて傍らの机に手紙を置く。
「ちょっとがっかり。触れてほしくなかったから」
息を吐きながら横になる。
それだけの動作で感情が身を震わせる。
俺は口を開きかけて、そっと体育座りをする。
冷たい床が責め立ててくる。
穏便な人が怒ると怖いとかよく言うけれど、怒りを見せない方が恐怖は強い。
結局数分してリビングに出て行った。
もし酔っていなかったら、笑って済ませてくれたんだろうか。
もしくは、怒りを見せてくれただろうか。
見放されたような虚しさに、俺は悪寒がした。
ソファに座り、月明かりを眺める。
類沢がいつも心の奥底で思っていることを垣間見た気がするが、それは望んでいたタイミングじゃなかった。
朝が来るのが少し怖かった。
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