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どちらかなんて選べない
どちらかなんて選べない02
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「類、沢様の」
「ちょっと色々あって」
固まる河南の肩を掴んで早口に言う。
左からは類沢の、右からは篠田の愉しげな視線が刺さる。
他人事だと思って……。
「シエラのメンバーって共同に住んでるんですか」
ああ。
純粋ゆえの食い下がり。
河南は悪くない。
「いや、瑞希は特例かな」
悪いのはこの男。
あと俺か。
首を汗が伝う。
「この話は今度にして映画始まるから行くよ、河南」
「やだ。瑞希は答えてくれないもの」
「じゃあ答えるから。類沢さんもプライベートなんだから邪魔しちゃ迷惑だし」
出ていこうとした俺の手を河南が離す。
「別に構わないよ」
「ほら。類沢様こう言ってるし」
だからなんなんだよ。
その様づけは。
結局どこに落ち着いたか。
「良い香りしますねー」
「どうも」
窓は軽く開いている。
ここは篠田の車の中だ。
乗員はもちろん四人。
このシチュエーションは夢すらまさか予想していなかっただろう。
河南が助手席。
なぜか、だ。
俺は隣の類沢を睨みながら後部座席に座っている。
「女を後ろには乗せられない」
篠田チーフ絶対楽しんでる。
俺はこの台詞を聞いて確信した。
「なんか感動です。シエラのトップとチーフさんと同じ車に乗ってるなんて」
緩やかにカーブを曲がり、橋を渡る。
「だってよ、雅」
「春哉こそ」
あれ。
名前で呼びあってたっけ。
それより気になるのは行き先だ。
一体このメンツで、どこで休日を過ごすというのだろうか。
河南が男ならまだいい。
いや、よくない。
この二人の思惑はなんなんだ。
そんなに河南と別れさせたいのか。
「ひぃやッッ」
「え?」
「なんでもないっ」
俺は首筋を押さえながら、必死で河南に手を振る。
そして笑っている類沢を横目で睨む。
「ナニ」
「……やめてください」
小声でいっても効果はないんだろう。
類沢は腕を組んでウィンクした。
「ちょっと色々あって」
固まる河南の肩を掴んで早口に言う。
左からは類沢の、右からは篠田の愉しげな視線が刺さる。
他人事だと思って……。
「シエラのメンバーって共同に住んでるんですか」
ああ。
純粋ゆえの食い下がり。
河南は悪くない。
「いや、瑞希は特例かな」
悪いのはこの男。
あと俺か。
首を汗が伝う。
「この話は今度にして映画始まるから行くよ、河南」
「やだ。瑞希は答えてくれないもの」
「じゃあ答えるから。類沢さんもプライベートなんだから邪魔しちゃ迷惑だし」
出ていこうとした俺の手を河南が離す。
「別に構わないよ」
「ほら。類沢様こう言ってるし」
だからなんなんだよ。
その様づけは。
結局どこに落ち着いたか。
「良い香りしますねー」
「どうも」
窓は軽く開いている。
ここは篠田の車の中だ。
乗員はもちろん四人。
このシチュエーションは夢すらまさか予想していなかっただろう。
河南が助手席。
なぜか、だ。
俺は隣の類沢を睨みながら後部座席に座っている。
「女を後ろには乗せられない」
篠田チーフ絶対楽しんでる。
俺はこの台詞を聞いて確信した。
「なんか感動です。シエラのトップとチーフさんと同じ車に乗ってるなんて」
緩やかにカーブを曲がり、橋を渡る。
「だってよ、雅」
「春哉こそ」
あれ。
名前で呼びあってたっけ。
それより気になるのは行き先だ。
一体このメンツで、どこで休日を過ごすというのだろうか。
河南が男ならまだいい。
いや、よくない。
この二人の思惑はなんなんだ。
そんなに河南と別れさせたいのか。
「ひぃやッッ」
「え?」
「なんでもないっ」
俺は首筋を押さえながら、必死で河南に手を振る。
そして笑っている類沢を横目で睨む。
「ナニ」
「……やめてください」
小声でいっても効果はないんだろう。
類沢は腕を組んでウィンクした。
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