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随分未熟だったみたい
随分未熟だったみたい13
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「ねえ、春哉」
黒ガラステーブルに並んだ二つの紅い灰皿。
どちらも高く灰が積まれている。
その向こうで、篠田が気だるく眼を擦る。
「なんで当たり前にお前はそこにいるんだ、雅」
「固いこと言わないでよ」
久しぶりの来客。
篠田は滅多に家に他人を入れない。
だから店では様々な憶測が立てられている。
豪邸だとか地下神殿だとか。
実際は普通に二階建ての一軒家。
異常なのは家具くらいか。
全世界から集めた総額数千万のインテリアたち。
類沢も月に一度来るか来ないか程度。
毎回内装が変わっている。
初めて会う黒テーブルに足を乗せる。
「それ、いくらかわかってるか?」
篠田がゆっくり尋ねる。
「リシャーレ一本くらい?」
「三本だ」
苛ただしげに指を立てる。
「贅沢」
「ほっとけ」
煙草を磨り潰し、カーテンを閉める。
まだ昼だというのに。
薄暗い陽光が漂う。
「ねえ、春哉」
「なんだ」
背もたれに首をもたれかけ、上目遣いに口を軽く開く。
「……ったく」
篠田は頬をなぞりながら類沢に近づき、その長い髪を掴んで唇を重ねた。
ギシリと鳴る。
噛み合うようなキス。
数秒後、小さく笑いが洩れる。
「満足か」
「しないって知ってる癖に……よく云うよ」
舌を舐め、類沢は乱れた髪を撫でる。
「春哉より巧い女性がいたら良いんだけどね」
「瑞希は? お前が教えて巧くさせればいいじゃないか」
ふっと眼に影がよぎる。
「そうなんだけどね」
「くくっ……大体お前にテクニック教えたのは俺なんだから。もしそんな女がいたら、お前が喰われるぞ」
「あー、それいいねぇ」
「バァカ」
一箱吸い付くし、二箱目のラベルを剥がす。
同じ銘柄。
ヘビースモーカーも譲り受けだよね、類沢は心の中で呟く。
それから髪を結い、立ち上がった。
「デートに付き合ってくれない?」
「断る」
だが答えを聞きもせず、類沢はキーを持って出ていった。
チャリ、と回しながら。
くわえた煙草を灰皿に吐き捨てる。
「……ガキ」
無くなったのは篠田の車のもの。
黒ガラステーブルに並んだ二つの紅い灰皿。
どちらも高く灰が積まれている。
その向こうで、篠田が気だるく眼を擦る。
「なんで当たり前にお前はそこにいるんだ、雅」
「固いこと言わないでよ」
久しぶりの来客。
篠田は滅多に家に他人を入れない。
だから店では様々な憶測が立てられている。
豪邸だとか地下神殿だとか。
実際は普通に二階建ての一軒家。
異常なのは家具くらいか。
全世界から集めた総額数千万のインテリアたち。
類沢も月に一度来るか来ないか程度。
毎回内装が変わっている。
初めて会う黒テーブルに足を乗せる。
「それ、いくらかわかってるか?」
篠田がゆっくり尋ねる。
「リシャーレ一本くらい?」
「三本だ」
苛ただしげに指を立てる。
「贅沢」
「ほっとけ」
煙草を磨り潰し、カーテンを閉める。
まだ昼だというのに。
薄暗い陽光が漂う。
「ねえ、春哉」
「なんだ」
背もたれに首をもたれかけ、上目遣いに口を軽く開く。
「……ったく」
篠田は頬をなぞりながら類沢に近づき、その長い髪を掴んで唇を重ねた。
ギシリと鳴る。
噛み合うようなキス。
数秒後、小さく笑いが洩れる。
「満足か」
「しないって知ってる癖に……よく云うよ」
舌を舐め、類沢は乱れた髪を撫でる。
「春哉より巧い女性がいたら良いんだけどね」
「瑞希は? お前が教えて巧くさせればいいじゃないか」
ふっと眼に影がよぎる。
「そうなんだけどね」
「くくっ……大体お前にテクニック教えたのは俺なんだから。もしそんな女がいたら、お前が喰われるぞ」
「あー、それいいねぇ」
「バァカ」
一箱吸い付くし、二箱目のラベルを剥がす。
同じ銘柄。
ヘビースモーカーも譲り受けだよね、類沢は心の中で呟く。
それから髪を結い、立ち上がった。
「デートに付き合ってくれない?」
「断る」
だが答えを聞きもせず、類沢はキーを持って出ていった。
チャリ、と回しながら。
くわえた煙草を灰皿に吐き捨てる。
「……ガキ」
無くなったのは篠田の車のもの。
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