あの店に彼がいるそうです

片桐瑠衣

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随分未熟だったみたい

随分未熟だったみたい10

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 翌日、初めての休みがきた。
「ホストにも休みってあるんですね」
 歯を磨きながら呟く。
「どこか行くの?」
 いつもよりラフな格好の類沢。
 オフモードってやつだろうか。
 結んでない髪は動くたびにサラサラと揺れる。
 俺は口をゆすいで答えた。
「河南に会いに行こうと思います」
「送ろうか?」
「まさかっ」
 遠慮じゃない。
 類沢が送ってきた理由の質問攻めが想像出来るからだ。

 待ち合わせは駅前の喫茶店。
 なんの捻りもないこの場所が、ひどく懐かしい。
 久しぶりに故郷に帰った気分。
 ホストの瑞希じゃなくて。
 類沢さんの居候じゃなくて。
 学生の瑞希。
 携帯で時間を確認する。
 河南が遅れるなんて珍しい。
 用意したプレゼントを眺める。
 長い間寂しい思いをさせたし。
 二週間ぶりか。
 大学には休学届けを出した。
 友人は全員本気にしてくれなかった。
 そりゃそうだろう。
 教授には流石に誤魔化した。
 大学行かずに歌舞伎町に通っているなど話せるはずがない。
 単位全て抹消されそうだ。
 冷静に考えたら俺、本当にありえない生活している。
 特に一昨日と昨日。
 歌舞伎町ベスト八は凄かった。
 凄いというか、最早麻痺してるけど。
 なんで六十近い吟じぃなんて存在があるんだとか。
 如月紫苑が恐すぎるとか。
 空牙もそうだが年齢不詳が多すぎるとか。
 珈琲を飲みながら記憶を整理する。
 しかも、あのメンバーとシエラのみんなが集まった時、俺シャツに下着しか着てなかったなんて。
 あ。
 いらないことを思い出した。
 火照った顔を包む。
「瑞希?」
 いきなり声がかかり、ビックリして顔を上げる。
「えっ……なにその格好」
 帽子を被ってワンピース姿の河南が俺を指差し止まっている。
「なにって」
「なんか……ホストみたい」
 絶句なんてもんじゃない。
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