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随分未熟だったみたい
随分未熟だったみたい05
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目が覚めると夕方で、俺はダボダボのシャツを着てベッドに横たわっていた。
身を起こそうとして寝返りをうつと、目の前に類沢の顔があった。
「わっ」
「額はぶつけられずに済んだね」
可笑しそうに云う類沢を何故か直視できない。
必死で記憶を辿る。
確か、みんなが助けに来て。
車で帰って来て。
それから……
顔から火が出そうなほど熱くなった。
「あ」
「思い出した?」
「るる類沢さん、俺……」
あれが夢じゃないなら。
現実なら。
ぐるぐると混乱する。
俺が誘った?
脚を擦り合わせると液体が絡まった。
サァーッと青ざめる。
「俺……え。まさか」
河南という者がありながら……
ポンと類沢が頭を撫でる。
俺の顔を引き寄せ囁いた。
「加減出来なくてごめんね」
そのスマイルに魂が抜けそうになった。
抜かれたかもしれない。
良い香りがする。
そっか。
仕事の準備しなきゃ。
客とって。
借金返して。
ボスっ。
ベッドに倒れる。
そんなことは全部どうっでもいい。
最重要は……
「夕飯出来たよ、ってまだ寝るの?」
「起きますっ」
彼だ。
テーブルには相変わらずプロ級の料理が並んでいる。
でも食欲はそそられない。
グラスを傾ける類沢にばかり目がいってしまう。
上下する喉に、理由もなく恥ずかしくなる。
「お箸の持ち方忘れたの?」
いつまでもカチカチとしていた俺の手元を指差す。
「あっ、いや」
「あのさ」
びくうっと背中が反応する。
何を言われるか全神経が張りつめる。
「僕も瑞希も玲とかいう男の薬でおかしくなっただけなんだから、そんなに怯えないでくれる」
「怯えてるんじゃなくて……っ」
じゃなくて、なに。
どうしたらいいのか、何を言えば良いのか、どんな顔をしたらいいのか全くわからない。
類沢が箸を置いて、席を立った。
俺のそばに来て両手を掴む。
カラン。
手から二本の棒が零れる。
「なんで瑞希は僕の家にいるの」
「へ?」
身を起こそうとして寝返りをうつと、目の前に類沢の顔があった。
「わっ」
「額はぶつけられずに済んだね」
可笑しそうに云う類沢を何故か直視できない。
必死で記憶を辿る。
確か、みんなが助けに来て。
車で帰って来て。
それから……
顔から火が出そうなほど熱くなった。
「あ」
「思い出した?」
「るる類沢さん、俺……」
あれが夢じゃないなら。
現実なら。
ぐるぐると混乱する。
俺が誘った?
脚を擦り合わせると液体が絡まった。
サァーッと青ざめる。
「俺……え。まさか」
河南という者がありながら……
ポンと類沢が頭を撫でる。
俺の顔を引き寄せ囁いた。
「加減出来なくてごめんね」
そのスマイルに魂が抜けそうになった。
抜かれたかもしれない。
良い香りがする。
そっか。
仕事の準備しなきゃ。
客とって。
借金返して。
ボスっ。
ベッドに倒れる。
そんなことは全部どうっでもいい。
最重要は……
「夕飯出来たよ、ってまだ寝るの?」
「起きますっ」
彼だ。
テーブルには相変わらずプロ級の料理が並んでいる。
でも食欲はそそられない。
グラスを傾ける類沢にばかり目がいってしまう。
上下する喉に、理由もなく恥ずかしくなる。
「お箸の持ち方忘れたの?」
いつまでもカチカチとしていた俺の手元を指差す。
「あっ、いや」
「あのさ」
びくうっと背中が反応する。
何を言われるか全神経が張りつめる。
「僕も瑞希も玲とかいう男の薬でおかしくなっただけなんだから、そんなに怯えないでくれる」
「怯えてるんじゃなくて……っ」
じゃなくて、なに。
どうしたらいいのか、何を言えば良いのか、どんな顔をしたらいいのか全くわからない。
類沢が箸を置いて、席を立った。
俺のそばに来て両手を掴む。
カラン。
手から二本の棒が零れる。
「なんで瑞希は僕の家にいるの」
「へ?」
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